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GPBB外伝 BEAST BATTLER`S Chapter.1 第一話:2日前の”キッカケ”

Chapter.1 吹き寄せる風

第一話:2日前の”キッカケ”

 

―――――今日で雨は6日目。
ひたすら雨が降っているグラウンドを眺めながら、フキヨセ・ヨーイチは少し憂鬱な気持ちとなっていた。
最近梅雨入りしたばかりだというのに、教室内の蒸し暑さは度を越している。
その湿気をなんとかしようとこっそり窓を開けていたが、雨の滴が入ってくるしノートは濡れるのですぐに閉じてしまった。
汗で肌に張り付いたYシャツの感触を不快に思いながら、ヨーイチはため息をついた。
その感触の不快さだけが、ため息の原因ではない。

「『先週からの梅雨前線の上昇に伴い、本格的な梅雨入りが始まりました』…」

ヨーイチが声の方を向くと、広げられた新聞がこちらに向かってくる奇妙な光景があった。
見れば両側に新聞を持つ手がある。それにこの声はいつも聞いている。

「だとさ、うんざりするよな?ヨーイチ」

新聞を畳みながら、モギ・シンがヨーイチの隣の席にへと座る。
昼休憩も後半だが、他の教室へ昼食を食べに行った生徒が帰ってきていない席も多く、割と教室内の人数は少なかった。

「シン、新聞読み始めたの?」
「いや、ウチのコンピュータ部のOBが記事になったって…ホラ、ガンプラバトルの開発部のさ」
「開発部?すごいね」
「へへ、そうだろ」

シンが照れくさそう鼻の下をこする。
自身の功績ではないが、自らの部活の所属員であった人物が何らかのことを成し遂げたというのは誇らしいのだろう。
今まで部活動に所属したことないヨーイチだったが、それはなんとなくわかった。
そして、彼の”ガンプラ”という単語が彼の憂鬱さを少しだけ打ち消した。

「…最近GPが足りなくてさ、全然」
「あー…そういえばまたなんか作ってたよな」
「うん、ソイツのパーツ用に幾つか買っちゃって…」

ガンダムのプラモデル、通称”ガンプラ”で戦うガンプラバトル界隈において、GPはある意味欠かせないものとなっている。
GPとはそのガンプラバトルによって手に入る電子マネーのことで、10GP=1円として換算される。

バトルをするごとに2GP貯まるのだが、勝利すればその数はいくつか変動する。
プラモデル以外にも使えるGPだが、中にはGPだけでしか買えない商品なども存在する。

「あそこの店さ、ジャンクパーツGPでしか売ってないんだよね」

ヨーイチの場合、ガンプラバトルの勝率は半々でGPの稼ぎが少なかった。
バイトもせずお小遣いの支給も少ない彼にとって、GPはある意味での貴重な収入だった。
故に節約しつつの使い方だったが、最近になって複数のキットに手を付け始めたため、限定販売のパーツ等々を買う際にGPを使いすぎてなくなってしまった、というわけだった。
しょーがない、モチベってのは散り散りになるもんで…。

「なんとかしてGPうまく貯めたいんだよなぁ」
「でもヨーイチのアニキってさ、ガンプラ部だったよな?教えてもらえばいいじゃん。それか入るとかさ」
「あー…ねー…」

ヨーイチらの通うここ、三楠ノ森高校・通称”ミクス高校”はガンプラバトルの活動を主としたガンプラ部という部活が存在する。
多くの高校に存在するガンプラ部だが、三楠ノ森市だけでなく、その周辺地域においてもミクス高校のガンプラ部は強豪として名を連ねていた。
そのメンバーの一人に、ヨーイチの兄がいた。

「…僕はあの部活には相応しくないよ」
「そうか?」
「うん…そこまで勝ってないしそれに…」

兄さんの迷惑になりそうだ。
ヨーイチは口に出さず、そう心の中で続けた。

「でさぁ、ちょっと見てほしいもんがあるんだけど…」

そう言いながら、シンは座っている席の隣の机に手を伸ばし、その中からノートパソコンを取り出した。
シンの席は、ヨーイチの席からは割と近い。
ノートパソコンを開き、しばらくキーボードを叩いた後、画面をヨーイチの方にへと向けてきた。

「これは…」

画面には動画プレイヤーが立ち上げられており、「Now loading」の文字が映像部分に映し出されている。

「先輩からもらったガンプラバトルの動画なんだけどさ」
「もらった?」
「あぁ、他言無用って言ってたけど…ヨーイチなら誰にも言わないだろ?」

そう言われても、とヨーイチは少しだけ困惑する。
そんなこんなしていると、動画の再生が始まった。
ザーっと砂嵐が流れていたが、突然ブツッと画面が切り替わり、字幕がずらりと表示される。

『1月11日 第二回ビーストバトラーズ 試合記録No.00020』

試合記録ということは、何かの大会のリプレイなんだろうか。
ガンプラバトルの大会や一般の対戦リプレイは、インターネットの動画サイトを探せばいくらでも転がっている。
有名所の対戦動画や立ち回りのうまい人等の動画は、ヨーイチも自身の参考にするために時々見ていた。
それらを実践出来るか出来ないかが上達の別れ道であるが、ヨーイチは後者だった。
再びザザっとノイズが画面に走り、今度は宇宙空間の映像が映し出された。
直後、バーニアを噴かした機体とそれを追撃する機体が画面を横切る。
追撃している側はティエレンと呼ばれる機体、ライフルやミサイルを打ちながらそれを牽制しようとしている紺色の機体は、多少カスタムされているものの、素体はジム改であるとわかった。
やはりこれは、ガンプラバトルのリプレイだった。

《Live or die!今回の試合も過熱しているぞォッ!!》

実況らしき音声が流れ、微かに観客の歓声も聞こえてくる。
シンも画面側に回り、ヨーイチと共に動画を見る。
いつの間にか、二人は試合内容を見るのに集中していた。

「何かの大会なのかな」
「だとは思うんだけど…」

だんだんと動画が進み、ひたすら逃げ続けていたジム改がティエレンの斬撃を間一髪でよけたところから流れが変わった。
ジム改がすかさず至近距離にいたティエレンにミサイルランチャーを打ち込み、ティエレンのバランスを崩した。
その隙を見たジム改がビームサーベルを抜刀し、ティエレンの胸部を貫き、撃墜した。
劣勢のかのように見えたジム改だったが、チャンスと隙を作り、バトルに勝利をおさめた。

「このジム改のヤツ、結構強いよなぁ」

シンの言葉に、ヨーイチもうんとうなずく

《BATTLE END!勝者はAサイド、トドロキ・カオル選手だぁーッ!》

実況の声と共に映像が切り替わると、どこかのホールのような場所が映し出された。
壁沿いにある階段状の観客席には多くの観客たちが座っている。ホールの中心には巨大な機械が置かれ、その両側におそらくバトルのガンプラの操縦者であろう人がいた。
直後、勝者の方の選手がアップで映される。バトルが全体を通して激戦だったのか、大会故のプレッシャーか、少しだけ息を上げているように見えた。
そして、敗者の選手が映し出されると、ヨーイチはその行動に疑問を持った。

「?」

負けた方の――Bサイドの選手が、立っていた場所の傍らにあったボックスを開き、唖然としている。
カメラ位置のせいか、そのボックスの中身はわからなかった。

「なにこれ?」
「俺もわからなくてさ…そのうち先輩に聞きに行こうと思ってる」

途端、Bサイドの選手がどこかへと向かい、映像に映らなくなる。
すると今度は、Aサイドの選手の様子が映し出された。Aサイドの選手は、ジム改のガンプラを隅々までチェックすると、申し訳なさそうに何かをつぶやいた。
そうしていると、Bサイドの選手がAサイドの選手につかみかかり、殴りかかろうとした。

「うわっ、この人…!」
「昔からっつーか、こういう人まだいるんだよなぁ」

対戦系のゲームにおいては、このようにバトルで負けた怒りを相手にぶつけようとする人は少なからずいる。
いつの時代も変わらないといえばそうであり、ただ珍しいともいえないものだった。
そんなBサイドの選手だったが、殴りかかる直前、側にいた黒服の男に取り押さえられた。
しばらくAサイドの選手を睨んでいたが、Bサイドの選手は何かを拾い上げ、その会場から出ていってしまった、
次第に動画はフェードアウトしていき、映った黒画面にパっと字幕が並んだ。

『撮影場所:三楠ノ森第三ビル地下ホール』
『この映像は極秘であり、外部への流出に注意すべし』

それがしばらく表示され、動画が終わった。

「…」
「…どう?」
「どう、と言われたら」

何故か、あまりうまいこと感想が思いつかなかった。
どこかの大会の動画といえばそうだが、違うといえばそうなのである。
つまり普通ではなさそう、ヨーイチはそう思っていた。それに…。

「最後さ、これ見たらマズイやつなんじゃないの?」

あっ、とシンがヨーイチからちょろちょろと視線を反らす。

「いや、うーん、まあ先輩が悪いことに、いや、俺らも悪くなるのかな…」
「もしかして僕に見せたのって?」
「違う違う!そうじゃない、もっと他の理由があってな!」

しばらく疑り深い目をしていたヨーイチだったが、その他の理由とやらを聞くことにした。
シンが元いた席に戻り、持っていったパソコンをいじり始める。

「理由?」
「あぁ、最後のさ、三楠ノ森第三ビルってあっただろ?」
「…うん」

ミクス高校から十数分ほどすると、三楠ノ森市の中心部へと行ける。
ビルもそれなりに多く、様々な会社の支社や本社が存在しているので、雰囲気的には都会だった。
しかし、その中心部の外縁部は都市部開発から漏れた、もしくは新しい職場に移転した会社が入っていた中身空っぽの建物が軒を連ねていた。
三楠ノ森第三ビルは、おそらくその一つである。

「言うほど遠くないよね、電車でホイとすぐ行ける」
「だろ?ん?」
「…」
「…なぁ?」
「……もしかして!?」

その考えを読み取った瞬間、思わずヨーイチはシンに聞いてしまった。

「へへ、察してくれたか」

そう言いながら、シンはまた画面をヨーイチの方に向けた。
モニターには地図が表示され、検索欄の住所の中に「三楠ノ森第三ビル」の名前があった。
シンが地図上に表示されたビルの位置を示すピンを指さす。

「ここに行ってみようぜ、週末に二人でさ」
「行こうって…!」
「確かにこの動画はまずそうだけどさぁ…生で見てみたくないか?こういうバトル」

シンの言い分もわからなくはない。
確かに、戦い方の上手い人のバトルは動画だけでなく自分の目で見てみたいと思うことはある。
現に、何回か一緒に大会を見に行ったことがあった。

「それにさぁ、GP貯めたいんだろ?大会ならGPの数も増えてるし」
「…あわよくば参加って感じ?でも…」
「もしかしたら意外と普通の大会かもしれないし…な?いいだろ?」
「……」

そう、わからなくはない。だがヨーイチはなんとなく不安なことがあった。
動画にて繰り広げられていたあのバトルからは、普通のバトルの雰囲気とは違う何かが画面越しに伝わってくるような感じがした。
大げさに言うなら、”殺気”である。
動画ではあまり映し出されてはいなかったが、バトルを見ていた観客やその歓声も、普通の大会よりピリピリしているように感じた。
バトルを見て盛り上がっているのは一緒だと思うが、この動画の会場はそれに加えて、観客が選手にプレッシャーをかけているように見えた。
ガンプラバトルをする会場でそんな雰囲気が漂う場所と言えば、考えられるのはほぼ一つしかない。

「……少し考えさせて」
「お、わかったぜ」

ヨーイチがシンにそう答えた直後、教室に昼休み終了5分前の時刻を伝えるベルが鳴り響いた。

「もうこんな時間か…ま、ゆっくり考えてくれよな、ヨーイチ」
「うん」

そう言って、シンは自分の席にへと戻っていった。
次の時間の教科を思い出し、ヨーイチは教科書やノートを机の上から出しながら、シンのことを考えた。

―――――まさかね。

最近増えているとはいえ、そんな簡単に見つかるものではない。
動画の出どころはシンが先輩に聞いてくれるだろう。何か大会の動画なんだ、アレは。
ヨーイチが考え込んでいると、教室の戸がガラリと開けられ、次の時限の教師が入ってきた。
起立、と日直が言い生徒たちが席を立つ。
ヨーイチは気付くのが遅く、ハッと起立した頃には既に礼が始まっていた。

 

 

===================================
夏が近づくと、だんだん日の沈む時間が遅くなり、放課後でもまだ夕方という時間が続く。
それらから来るのだろう、なんとなく時間の流れが遅く感じる錯覚が、ヨーイチは好きだった。
雲のスキマからオレンジ色に染まった空が見え、そこからの木漏れ日が濡れた地面を照らしている。
雨は既に止んでいたが、体にまとわりつく蒸し暑さはまだ残っていた。
早めに歩いて15分、ヨーイチは自宅にへと到着した。

「さてと」

ポストの中身を調べ、何枚かの郵便物を取り出すと、玄関のドアを開ける。

「ただいま…」

言ってみたが、返事はない。
センサーが反応し、夕日の光だけが差し込んでいた玄関に明かりがついた。それだけだった。
置いてある靴はほとんどなく、家には誰も上がっていないことがわかった。

「ま、誰もいないよね」

そんな呟きをこぼし、ヨーイチは靴を脱ぎ土間に揃えると、そのまま台所にへと向かった。
家の中はまるでサウナのように蒸し暑く、滞留していた生暖かい空気がヨーイチを包んだ。
普段ならタイマー指定でエアコンが動いているはずだが、この状況を見るとそうではなさそうに思う。

「母さんがかけ忘れるはずないしな、兄さんか…?」

父母、兄、そして僕で構成されるヨーイチの家族。
その一人である兄は、少々せっかちなところがあった。言ってしまえば「抜けている」というヤツかもしれない。
台所につくと、すぐに冷蔵庫を開けミネラルウォーターの容器を取り出すと、ヨーイチは勢いよくグイっと飲んだ。

「んっ…」

乾いていた喉に冷えた水が流れ、水分を欲していた体を潤していく。

「ぷはっ」

容器の半分ほどを飲み干し、少しだけ濡れた口を袖口でぬぐう。
ミネラルウォーターを冷蔵庫にしまい、リビングのエアコンスイッチを付け、ヨーイチは2階の自室にへと向かった。

――――ビーストバトラーズ、か。

学校でシンに見せられた動画にあった、その言葉を思い出す。
ドアを開けた瞬間、室内のむわっとした空気が全身を包んだが、それを気にせずすぐにパソコンが置いてあるデスクにへと向かう。
電源ボタンを付けると同時に、床に落ちていたリモコンを拾い上げエアコンをつけた。
数分待って、ヨーイチはパソコンの起動が終わったことを確認すると、すぐにブラウザを立ち上げ検索サイトを開いた。

――――普通の大会なら、名前ぐらいネットに載ってるはずなんだけどな。

まずはビーストバトラーズという単語のみで検索を始める。しかし、ページに表示されたのはほとんど関係なさそうに見える記事ばかりだった。
検索欄に言葉を追加し、検索を重ねる。情報、掲示板、大会、暴力、マイナー、有名…。
そうしているうちに十分ほど時間が過ぎた。

「…なるほどね」

有力な情報は、つかめない。出てくる気配もない。
中々冷えない室内で、ヨーイチはウーンと伸びをした。
ふうと息が出る。これだけ―――とはいえ十分ほどだが―――検索しても出てこないとはどういうことなんだろう。
そもそもそういうリプレイであるとしたら、ネットの動画サイトに転載されていたりするはずである。
再びため息をつきながら、ヨーイチは椅子の背もたれにもたれかかる。
そういえばあの動画「映像は極秘」とか書いてあったな、とヨーイチは思い出した。
映像は極秘、ネットに情報はない、データが送られてきたのはシンの先輩から…。

「なんてこと、あるのかなぁ」

ヨーイチは、ビーストバトラーズはインターネットにすら載らない大会、という考えを浮かべた。
真相はさておき、そういうタブー的なノリとかネタとかは、ネットを探せばいくらでもあるハズである。
大体ソレはネタで終わってしまうのだが、今回は動画という証拠らしい証拠(とも言えないかもしれない)があった。
しかし、そんな証拠を証明する証拠が出てこない。あるいは、そのビルに行ってみないとわからないかもしれない。

「創作ってこともないだろうし。けど体験談もないよな…」

一人ぶつぶつとつぶやき始めたヨーイチだったが、あれ、とふと部屋の中を見まわす。
何かが欠けているような、いないような。

『……ブッッ…チッ…』

突然、机の下からノイズのような音声が聞こえた。
下を除くと、本や服が散乱している中にゴソゴソと何かが動いていた。
まん丸で、割とデカイ球体である。

「あっ、ごめん!」

散らかっていた本や服をどけ、その球体を取り出す。
片づけ損ねていた本が崩れ偶然そこにいた”コイツ”に当たったんだろう。
もう一度部屋を見回すと、期末テスト直後ということもあってか、教科書やらプリントやらで部屋は散らかり気味だった。
そろそろ整理しないと、母さんはこういうことにうるさいから…。

『パァッ!ハーッ!アッ!モー!』

思想にハマりそうになった頭を、その電子ボイスが引き戻した。
耳をパタパタとさせながら、”深緋”をした球体―――。

『キミナァ、ソロソロ部屋片ヅケタラドウヤ!?』

ハロが喋りだした。

『母サンヤッテ片ヅケロイウテタヤン!』
「覚えてたの?最近忙しいししょうがないでしょ」
『オカゲデチョットシタエラーデナァ…テカ、忙シイ言ウテモマタパソコン?』
「テスト終わったからいいんだよ」
『…マァエエワ、トリアエズ、部屋ハ片ヅケテオキヤ』

ある程度落ち着いたのか、僕のハロ、リイナ・ジョリーは羽ばたかせていた耳をパタンと閉じ胡散臭い関西弁モドキで話すのをやめた。
このハロを買って数か月、何か特徴を持たせたいと思ったヨーイチは、ネットに載っていたハロ専用プラグインの実装を見様見真似で挑戦した。
執事口調や荒い口調等様々なカスタムが出来るとワクワクしながらハロのOSを弄っていたヨーイチだったが、その途中、言語プログラムの編集中に何かしらのエラーコードを読み込ませてしまった。
結果、関西弁口調と一般口調が混ぜこぜになっていまい、こうなってしまった。
失敗した末に生まれた特徴だったが、何故かヨーイチは嫌いにはなれなかった。むしろ良いと思った。
陽気な性格で設定されていたこともあり元からつけていた名前・リイナに陽気という意味のジョリーを加え、リイナ・ジョリーとした。

「ん、わかりました」

リイナを机の上に乗せ、椅子の背もたれに寄りかかりぐったりとする。
そのまま天井を見ながら、ヨーイチはしばらくボーっとしていた。
考えてみれば、ちょっと危なげな雰囲気のことに手を出しているような気がする。
一抹の不安を胸の中でじっとりと漂わせながら、ヨーイチはそう思った。

「…週末か」

壁にかけてあるデジタル時計は、今日が木曜日であることを示していた。
シンとその会場とやらに行くまで2日。考える時間はあるといえばあるが…。

「…」

ポケットに入れていたスマートフォンを取り出し、SMSのアプリを開く。
ヨーイチは連絡先の一つ『モギ・シン』の欄をタッチし、スイスイと文字を入力していった。
幾つかメッセージを送り終えると、下の階から玄関のドアを開ける音が聞こえた。

『誰カ帰ッテキタデ』
「たぶん母さんでしょ…兄さんは部活の方で忙しそうだからな…っと!」

椅子の向きをかえ、部屋を出ようと立ち上がる。
ドアに向かおうとしたヨーイチだったが、瞬間彼は机の横にある棚の方に目をやった。
元々本棚としてその役目を担っていた割かし大きな棚だが、今は自分が作ったプラモデルがずらりと並び、本のほうが比率が少ないという状況になっている。
その作品の一つ、ほとんどがシンプルに仕上げてある作品の中で、一つだけミキシングビルドで仕上げられたガンプラがあった。

――――持っていくならアイツかな。

いつもガンプラバトルで使っている、自分のオリジナル機体。
兄の作品の模倣ではあるが、個人的には気に入っていた。
部屋を出て、ヨーイチは帰ってきた家族を迎えに一回にへと下っていく。
主がいなくなった部屋の棚、数々あるガンプラの中でその機体…ジム・スナイパーPSTの頭部バイザーが夕日を反射させキラリと光った。

 

 

つづく

 

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