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GPBB外伝 BEAST BATTLER`S Chapter.1 第二話:”闇”にへと踏み込む

「メンバー集計完了、エントリー確認入ります」
「戦闘システムの異常なし。電力、表示、共に正常」

モニターの光だけが灯された薄暗い一室の中、表示された情報を数人のオペレーターが読み上げていく。
画面に向かうオペレーターらの後ろ、ホッチキスでまとめられた資料を見る男とそれを見守る男の部下の姿があった。

「今のところ異常はなし、か」

男は資料を閉じ、前に広がる多くのモニターへと目をやる。
モニターにはシステムの数値、登録された参加メンバーの名前、それらがずらりと表示されている。
その表示を見るオペレーターの報告を聞き、異常があればそれに対応した指示をする。それが男の仕事だった。

「そうですか、それならよかったのですが…」
「あなたのが、じゃなくてあちらの報告がですよ」
「うっ…」

そういいながら、男は呼んでいた資料を部下に返した。

「参加メンバーが2、3人足りない、そうですね?」
「うぇ、あ、はい」

しどろもどろしながら、部下が男の問に返答する。
自分より下の地位とはいえ、一応年上である部下に対し、男は少しだけため息をついた。
…しかし、この人にそういう感情を抱いても問題は解決しない。

「部長!」

男がそう思い、解決案をひねり出すため思考を巡らそうとしたが、直後、オペレーターの一人が男を呼んだ。

「どうした」
「カメラB-2…入口付近に二人…学生ですかね?これは…」

男がオペレーターの方にへと向かい、指し示す画面を見る。
入口付近、参加者受付の場所がある所の監視カメラが、その受付と話す二人の少年の姿を映していた。
一人は受付の黒服に食いつくが、もう一人はそれを止めようとしているように見える。

「…また子供なのか」
「月初めの4人、この間のマッチで3人が脱落しましたが」

男の所属する組織がら、こういった身分、ましてや子供が来るというのはあり得ないことだった。
大体、”ここ”に参加するには必ず参加者か関係者の紹介が必要であり、かつ高校生以下は可能な限り追い出している。
が、男は一つの案を思いついた。

「セガワさん」
「あ、あい」
「メンバーの空き…彼らにしてみませんか?」
「…彼らを、ですか?」
「月頭の学生4人は実験的なアレがありましたが、今はメンバーが足りない。それに…」

このまま帰したら、何かしら”ここ”の噂が広まる恐れもある。そう男は心の中でつなげた。
オペレーターに受付係と通信をつなぐよう指示し、男は胸ポケットにしまっていたマイクと小型イヤホンを装着した。

「受付係、部長です。今監視カメラでそちらを確認しています…その二人、えぇ、彼らです、”空きができた”ので…参加させてください」
「部長、しかし…!」
「ハロ持ってるんですよね…作品も?…持ってるんですね、では”仕込み”は…えぇ、やらせてください。それでは」

そう言って、男はマイクの電源を切った。

「ぶ、部長?えっと、彼ら大丈夫なんですか…?」

男の部下が言う。

「…月初めに参加した4人の中で、唯一無傷のまま一人だけ生き残った人がいました」

数週間ほど前、学生が入ってはいけない”ここ”に4人の学生が偶然―――と思う―――訪れた。
その四人はみな「”ここ”の動画を見て訪れた」と言っていた。それが”月初めの四人”であった。
男が3人、そして女が1人。共通項は4人共ガンプラバトルができるということだった。
そのため半ば強制的に”ここ”に参加させ、結果、4人のうち2人が脱落、1人は自ら辞退を申し出たため”罰”を負わせた。
そして残った一人だけが生き残った。それが、1人だけ女子学生だった。

「そして彼女は、『ここならいいかもしれない』と次からも参加するように言っていました」
「…」
「彼女のようにとは言いませんが、彼らもここのことを知ってくれればいいんです、そしてわかってくれればいい…」

モニターにはすでに誰もいなくなった受付が映っている。
受付が自分の指示に従い二人を誘導したのだろう、と男は思った。
そう、俺のように”ここ”の魅力をわかってくれる可能性だってある。少なからず”ここ”にはそう言う人がたくさんいる。その魅力に喰われたならそれまで。それが―――。

「彼らの準備ができ次第、ビーストバトラーズを始めます」
「了解!」

ここの仕来り、というやつなのだ。
男は一瞬したり顔を見せ、そう思った後、再び部下と資料のことについて話し始めた。

 

 

Chapter.1 吹き寄せる風
第二話”闇”にへと踏み込む

 

 

地下、とはいえこんなに暗いモノなんだろうか。
そう思うくらい、ヨーイチがシンと共に連れられてきた部屋は薄暗かった。
電灯は何本かしか入っていない。あとはヨーイチ達をここに連れてきた黒服の男が操作する機材のモニターの光だけだった。

《ガガガ…ビビ…》
《…》

機材から伸びているコードの先には、咥えるような形で口の中にへと突っ込まれているリイナとシンのハロがいた。
外側にも接続端子があるが、黒服曰く「本格的に仕込まないといけない」とのことだった。
その”仕込み”の内容を聞き出そうとしたが、一方的に拒否されてしまった。

「あの…大丈夫なんですよね?」
「壊れることはない、安心してください」

機材を操作したまま、黒服がきっぱりと言う。
リイナもシンのハロも、目玉の部分を点滅させながらいつもは言わないような声を出していた。
こんなのを見れば、少し心配になってくる。

「…なんだか乗るに乗っちまったな」

こそりとシンがヨーイチに話しかける。

「ホントに大丈夫かな」
「雰囲気とかちょこっとあやしいけど…ホラ」

そう言いながら、シンが上の方に指をさす。
一瞬それがわからなかったヨーイチだったが、耳を澄ましてみると、微かに人のざわめきが聞こえるのがわかった。
人数のほどはわからないが、少なくはないと思う。

「人もちゃんといるし…やっぱり大会か何かなんだ」
「でもこんな感じでハロがいじられるって初めてだよ?」
「登録制のなんかだろ、終わったらすぐ消せば大丈夫さ」

ヨーイチ達が見たことのあるガンプラバトルの大会では、大体ほとんどが大会終了後にハロの入っている大会記録などの処理をしていた。
だから、このように最初からハロに何かしら施されるというのは初めてであった。

「…」

ヨーイチがふと、ハロの傍に置かれた自分たちのガンプラに目を映す。
ヨーイチの機体・ジム・スナイパーPST、そしてシンの機体・ジム・フルバーニアンである。
人の作品を扱うということを意識していないのか、その立たせ方は少し雑なように見えた。

――――運営スタッフとはいえ、もう少し丁寧に扱ってほしいかな…。

そう思う傍ら、ヨーイチは自身の中で不安のようなものががじわりと滲んできているのがわかった。
先日の約束通り、ヨーイチはシンと一緒に動画に表示されていた場所に訪れていた。
ビルのある場所に到着すると、ヨーイチたちは建物の古ぼけた見た目、そして中のがらりとした雰囲気を見て、本当にここでそんな大会がやっているのかと疑問に思った。
一階フロアの電球はほとんど割れるか取り付けられていないかの状態だったが、たった一か所だけ、電気が灯されている場所があった。
それが、今いる地下への階段であり、そこを二人で降りていくと…といった感じだった。

「なんだよヨーイチ、怖いのか?」
「…少し、ね、正直」
「大丈夫かよおい」
「そのうち慣れるさ」
「俺よりヨーイチの方が強いんだからさ、大丈夫だって」

そう言われても、あまり不安というものは和らがないのがヨーイチ・フキヨセと言う人物だった。

「失礼します」

そうこうしている内に、黒服の男がハロを持ってこちらに話しかけてきた。
リイナもシンのハロも、いつも通り目のライトを光らせヨーイチたちを見ている。
黒服がヨーイチたちにリイナらを渡す。

《ウーン》
「大丈夫?リイナ」
《ナンカ、コウイウ弄ラレ方、久シブリ、ダカラ》

喋り方がカタコト気味になっているのが気になったが、中のOSなどは正常に見えた。
とりあえずホッとしたヨーイチだったが、よく見るとお尻の部分(普段地面についている部分)に、何か貼ってあるのに気が付いた。

「…156?」

シンも気付いたらしく、そのハロの貼られたシールのようなものに書かれた番号を読んだ。
リイナのシールには、387と書いてある。

「それは選手専用の番号となります。簡単にはがれやすいので、参加中は剥がさないようお願いします」

簡単にはがれやすいというが、そのシールは本当によく見ないとわからないほど小さかった。
黒服の注意を耳にしながら、ヨーイチたちは自分のガンプラをしまった後、ハロの口をパタンと閉じた。

「ではこちらへ…」

直後、黒服が二人をどこかへの案内を促した。
ヨーイチたちも黒服の指示に従い、黒服と共に家を出た。
先ほどの部屋と変わらずか、それ以上に暗い通路を歩いていく。
通路を進むにつれ、先ほど微かに聞こえていたザワザワという声がはっきりとしてきた。

「すぐに説明が始まりますので、どうぞ…」

さほど時間もかからず、次の部屋にへと到着した。
黒服がドアを開けると、部屋の光が薄暗い通路を照らす。
さっきの部屋よりは明るい。そのことになんとなく安堵した二人が、黒服の言う通り部屋に入ったその瞬間だった。

「ッ…!」

その一室に入って数歩、ヨーイチとシンはその場でギョっとして、固まってしまった。
先ほどの部屋よりは広く、そして薄暗いということもなくむしろ明るい。
乱雑に置かれた長いテーブルと椅子、そして部屋の奥の壁一面に大きな何かのシャッターがある以外は普通の部屋であった。
しかし、それを気に掛ける前にヨーイチ達が見た―――感じた、と言った方がいいかもしれない―――のは、部屋の中にいた大勢の人たちからの圧迫感のある視線だった。

「う、あ、えっと」

シンがおどおどとする。前にいたヨーイチは固まったまま、そういうことをする余裕がなかった。

――――珍しい、こんなところにガキか。
――――なんでこんなところに子供がいるんだよ?
――――先月に入ってきたヤツらは…何人生き残った?
――――知らねえ、でも大体は…ダメだったろうな。

人々の中からそんな声が聞こえてきた。幻聴ではない。今出ている汗は嫌な汗だろうとヨーイチは思った。
面食らった二人だったが、先にシンがヨーイチに声をかけた。

「あー、ええ、ヨーイチ。とりあえず座ろうぜ」
「…うん」

入口傍に空いている席があることを見つけたシンが、テーブルにハロを置いて座る。
その隣にへと座りながら、ヨーイチはチラリと周囲を見た。
先ほどからの自分たちへの視線はほとんどなくなっている。視線の主たちは自らの持つハロを操作し、何かしらのチェックをしていた。
大会の試合前などではよく見る光景なのだが、なんとなくここも普通の大会の雰囲気とは違うモノがあった。
言ってしまえば変な例えだが、そう言うことも可能かもしれない。

「ハロ、死んでるみたいだ」

え?とシンがヨーイチの方を向く。
ざっと見ると、ここにいる人々―――30人ぐらいだろう―――はほとんどハロを所持している。
これくらいいれば、ハロの発する電子音や耳をパタパタとさせる動作などで多少にぎやかになるはずだが、ここにはそれがない。
機械であるが、フレンドリーな相棒。少なくともヨーイチはそういう印象をハロに持っていた。
しかし、ここのハロは自分の知っているハロとは違う。
ピクリともせず、ただ主の操作を受けているだけのソレは、ヨーイチに何か違和感を感じさせていた。
そう思っていると、再びドアがガチャリと開いた。
さっきの人とは別だが、また同じような黒いスーツを着た男たちだった。

「……選手はそろっているようだな」

名簿と人々をチラチラと見ながら確認する。

「では、再び簡単に試合での立ち回りを確認します」

再び、ということは一度説明しているのか。
詳しい説明が聞けないかもしれない、ということをヨーイチは一瞬心配した。

「選手は入場時、ハロを持ったままバトルスペースにへと歩いてもらいます。バトルスペースについたら、まず正面の接続部にハロをセッティング、中身のガンプラを選手から見て左手のBボックスに入れてもらいます」

黒服の説明を聞いた瞬間、ヨーイチは動画にて映されていた光景の内容がなんとなくわかった。
負けた選手がボックスから取り出していたのは自分のガンプラだったんだ。
しかし、何故自分のガンプラを別のボックスに入れておくのかが疑問に残った。
その後も、黒服の簡単な選手の立ち回りの説明がされた。

「これで説明を終えます。早速ですが……ナンバー113、156の選手はついてきてください」

黒服が手元の資料をめくり、次の番号を呼んだ。
ナンバー156。その番号を持つ人は…。

「え、俺?」

シンが自分に指をさし、黒服に聞き返す。
だが、黒服は淡々と「はい、そうです」と返した。

「飛び入り参加っぽいけど、初戦かよ!」
「いきなりだね…」
「へへへ、さっきはあー言ったけど…」

シンが机においてあったハロを持ち、立ち上がる。
心なしか、彼の手は少しだけ震えているように見えた。

「…シンなら大丈夫だと思うけどな」
「正直緊張はしてるけど、こうなったらやるしかねえよな……じゃあ行ってくるぜ」
「うん」

そう言い、シンはハロと共に黒服の元へ行った。
同じくして、シンの対戦相手であるナンバー113の選手も立ち上がる。

「…もしかして、イヤ…フフフ…」

偶然近くにいたナンバー113の選手が呟き、傷だらけのハロを持ち黒服とシンの元に向かう。

「それではこちらへ」

黒服に案内され、シンとナンバー113の選手が部屋から出ていく。
バタンとドアが閉じた瞬間、部屋の壁一面にあったシャッターが開く音がした。

「何だ…?」

ヨーイチがシャッターの方に目を向ける。
瞬間、シャッターが開くにつれ強い光が部屋内に差し込んだ。
思わず目を細めたヨーイチだったが、彼の耳に先ほど聞こえていたあの人々の声が入ってきた。
人々のざわめきがはっきりと聞こえる。目が光に慣れ、ヨーイチはシャッターの向こう側を見た。

「!!」

ヨーイチはその光景を見た瞬間、少しだけ信じられないような気持ちになった。
割と広めのホールの真ん中にはハロの顔を象った巨大な機械が置かれ、壁沿いに階段型の観客席がある、と言った感じだった。
この廃ビルを訪れる前日、ヨーイチは廃ビルについて少しだけ下調べをしていた。
大分前にどこか大企業の支社が利用していた、ということまではつかめたが、こんな大ホールがあるというのは初めて知った。
加えて、この大人数である。

――――いうほどマイナーでもないのかな。

しかしインターネットにそんな情報が出てこないのは違和感がある。
観客席にはまばらに人が座っているのが見える。だんだんとシンの動画での光景と一致しつつあったが、観客席はあの動画のようには多くない、といった感じだった。
ホールの様子、今の部屋の様子卯、それらをチラチラと見て5分が経った。

《Live or die!!観客の諸君!今日もビーストバトラーズが始まるぞオオオオッッ!!》

途端、部屋の天井の隅に設置されているスピーカーから勢いよく声が流れ出した。
突然だったために、ヨーイチは少し驚いてしまった。

《実況はいつも通り、この俺ユウがお送りしていくぜェー!》

聞いたことのない名前だったが、この歓声からしてここでは人気のある人なのだろう。
一拍置いて、再び実況が話し始めた。

《それでは、選手入場だッ!!》

ホールの壁面にある巨大モニターが映像を映し出す。
《選手紹介》の文字が現れた直後、ずらっと選手の情報が表示された。
AサイドとBサイドに分かれており、Bサイド側の欄にモギ・シンの名前がある。

《Aサイドッ、出場回数なんと5回!しかしどれも一回戦落ちッ!キジマ・レンタロウだァーッ!!》

名前と簡単な自己紹介が行われると、観客の歓声から笑い声が混じり始めた。
5回出場一回戦落ち。それほどこの大会に思い入れがあるのかそれともといったところかもしれない。
普段なら失笑ぐらいはしそうだが、今は緊張に押され気味なためか、しなかった。
こちらから見て左側にある入場口から、Aサイドの選手が現れた。
片手にハロを抱え、真ん中の巨大ハロの方へ進んで行く。

《対してBサイドッ、今回初出場の高校生!珍し学生枠、モギ・シンだァァーッ!》

Aサイドの選手ほどではないが、実況の呼びかけと共に歓声があがる。
そして、Bサイドの入場口からハロを片手に持ち緊張した趣きをしたシンの姿が現れた。

――――頑張れ、シン。

ヨーイチはそう心の中で願い、シンが中心のバトルスペースへ向かうのを見守った。
彼の向かうその先に何があるのかは、まだどちらも知らない。

 

 

つづく

 

 

 

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