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GPBB外伝 BEAST BATTLER`S Chapter.1 第四話:ヨーイチ”出撃”

ホールから出てしばらく、よたよたと薄暗い通路を歩く。
力を振り絞りといえばそうなのだが、体力はまだある。むしろ精神的に疲れているのかもしれない、とシンはそう思った。
背中から浴びせられる光。野次混じりの歓声。
初めての経験で、初めての”敗北”。
負けたことがないということではない。シンにとってこれは、今まで感じたことのない”敗北”だった。
腕に抱えているイチローは、何故か何もしゃっべてくれない。それどころか、ピクリとも反応しなくなった。
情けないけど、こういう時だからこそイチローには何かしゃべってほしい。
とはいえ、シンはそのイチローの中に入れてある”ソレ”をあまり見たくはなかった。
ふと歩みを止め、恐る恐るイチローの口を開け、中身を見てみる。
ハロはガンプラビルダーの相棒としてだけでなく、ガンプラの作品を入れて持ち歩くいわばケースのような役割も担っている。
サイズ的にHG(ハイグレード)サイズのものしか入れられないが、シンのガンプラは問題なかった。
だが、中にあったのはHGサイズのガンプラでもなく、人型の形をしたプラモデルでもなかった。

「…ジム」

シンは、イチローの中に入っている”灰色の残骸”――――ボロボロになったジム・フルバーニアンのガンプラを見てつぶやいた。
そうしていると、通路の向こうからコツコツと足音が聞こえてきた。
シンが顔を上げ、その方向を見る。
薄暗い通路から現れたのは、名簿リストを片手に持った黒服の男、そしてそれについてきている選手だった。
黒服の後ろにいる選手の腕にはハロが収まっている。大体ハロというのは緑色がスタンダートかつ人気の色で、所有するガンプラビルダーの半数が緑色のものを所持している、とどこかのサイトか何かで見た。
だが、その選手の持っているハロは、そんな色ではなかった。

―――――――リイナの色は深緋こきひって言うんだ。あまり聞かない名前だけど、僕は好きだな……。

その色は地味だと言ったとき、ハロの所有者はそう答えた。
思わずシンはその選手の名前を言った。

「……ヨーイチ」
「…シン!」

その選手――――フキヨセ・ヨーイチが、シンのもとに駆け寄ってくる。
ヨーイチを見て、シンは何故かとても安心したような感じになった。
いつも会っている知り合いが、目の前にいる。

「やられちまった……な……」
「ッ…」

うまく言葉に表せないまま、シンが言う。
一方的にボコボコにされ、さらに罵声を浴びせられる様子を見られたのだから、情けないと思う。
口が開かれているイチローの中身を見たヨーイチは、”ソレ”を見て少し驚いたような表情を見せたが、すぐ真面目な顔になった。
先ほどまで怖がっていたように見えたヨーイチだったが、今はそんな様子は見られなかった。

「……いいんだ」

そう言い、ヨーイチはリイナのハロを開き中から自らのガンプラを取り出す。
片手にハロを抱え、片手にガンプラを持つと、ヨーイチは光る照明と観客が待つホールの出入り口にへと向かった。
そして、ヨーイチはホールにへと入る前にシンの方に振り向いた。

「仇はとる」

微笑し、シンに向かって言う。
だがその表情は、少しだけひきつっているようにも見えた。
ホールの方にへと顔を戻し、ヨーイチはバトルスペースにへと歩いていく。
シンはその後姿を、ただ見守る他なかった。

 

Chapter.1 吹き寄せる風
第四話:ヨーイチ”出撃”

 

《Aサイドは引き続きキジマ選手が続投!彼の次の相手は、同じく学生!フキヨセ・ヨーイチ選手だァーッ!!》

中心のバトルスペースへ向かう途中、実況が自らの名前を読み上げる。
同時にあがる観客席からの歓声、そして野次。
動画や控室で見ていた時とは違う”本物の空気”に身を包まれながら、ヨーイチはBサイドのバトルスペースにへと到着した。

―――しっかりやれよー!
―――俺の金を無駄にするな!

聞こえてくる野次の内容で、ヨーイチは自らが置かれている状況を改めて把握した。
僕にはお金が賭けられている…。

《既に知っているかもしれないけど、初出場の選手にベットした時に手に入るGPは通常の倍となっています!皆の期待を背負って、頑張れヨーイチくん!》

実況の言葉に、ヨーイチは少し驚いた。
お金はお金でもGPが賭けられている?ということは、ここにいる観客は皆ガンプラビルダーか何かなんだろうか。
しかし、GPが欲しいならそれこそ自分で勝ち取りに行けばいい話だ。
先の選手が言った通り、大体の人々は”ここの雰囲気”というものを味わいに来ているのかもしれない。
だが、自分はその雰囲気に飲まれてはいけない。
左側のボックスを開け、ヨーイチは持っていた自らのガンプラ―――ジム・スナイパーPSTをその中に置き、蓋を閉めた。

《大丈夫カ?ヨーイチ》
「大丈夫、いけるさ」

リイナの問いかけにそう答え、ヨーイチは目の前にあるハロの接続部にリイナを置いた。
リイナの目がピカリと光る。シンのバトルを見ていたときにも思ったことだが、中央部に置かれているこの巨大ハロは、やはりこの位置から見てもかなりの大きさに見えた。
投影機の役目を果たす巨大ハロ、バトルスペース、そしてこのガンプラを破壊するボックス。これらをすべて総括して、”サバイヴ”と呼ぶシステム…なのかもしれない。

「おい!」
「?」

巨大ハロの口が開き、ホログラムが投影されてようとしていた途中、向こう側にあるAサイドのバトルスペースからヨーイチを呼ぶ声が聞こえた。
シンを打ち負かした、あのグフ・カスタムの操縦者だ。

「あいつみてえにはなるんじゃねーぞ!ハハハ!」

煽り気味のその言葉に、ヨーイチは怒りを覚えた。
だが、ヨーイチは何も返事は帰さず、ただその怒りをぶつけず、心の中でそれを燃やし続けた。
この怒りが、この気合が、雰囲気に飲まれない原動力となる。

「…かも、しれない」
《?》
「なんでもない」

ふとつぶやいた言葉にリイナが反応したが、適当に返しておいた。
気付くと、ホログラムが完全に展開され、ヨーイチの周囲に機体の情報が表示されたウインドウが浮かびある。
その一つに、「物理破壊確認」というウインドウがあった。

「これが…」

ウインドウに映し出された、ジムスナイパーPSTがアームに縛りあげられている姿。
それはまるで、ガンプラの命をこのビーストバトラーズに捧げているような感じに見えた。
ヨーイチの手元に球体の操縦桿が現れる。すぐに操縦桿を動かし、機体の状態のチェックをする。

「リイナ、モードは?」
《[MMウェポンノママヤ]》
「そっか…まあどちらにせよ、今日はそれしかないけどね」

ヨーイチの操縦するジム・スナイパーPSTは、ジム・スナイパーⅡを元としたオリジナル機体である。
外見はあまり変わらないが、主な特徴として交換が可能なバックパックがあげられる。
PST(Plenty Skill and Tool)。多くの機能を持たせることができるこの機体の名前には、そういう意味が含まれていた。
そして、今ジム・スナイパーPSTは『MM(マシマシ)ウェポン』と呼ばれるバックパックを装着している。

「…!」

しばらくして、ヨーイチの前面にジム・スナイパーPSTのメインカメラの画面が映し出される。
同時にその画面にフィールドの情報が映し出された。

「…都市部か」

表示されているフィールドの名前を読み上げると、ヨーイチは収まりかけていた不安を再び思った。
――――この機体で優位に戦えるだろうか。
いや、そんなことを思っても仕方はない。
ヨーイチは深呼吸をし、自らを集中させると、再び操縦桿を握りなおした。

「やれるだけ――――」

フィールド情報のウインドウが消え、カタパルトデッキの光景が広がる。
ジム・スナイパーPSTが姿勢を屈ませ、射出の準備を完了させた。

「やってやるさ!」
《オウヨッ!》

そんなヨーイチの言葉に合わせるように、リイナが電子音の声をあげた。

《BATTLE START!!》

「ヨーイチ・フキヨセ、ジム・スナイパーPSTで出ます!」

バトル開始の合図がなされ、同時にジム・スナイパーPSTがカタパルトを滑っていく。
数秒かからないうちに、ジム・スナイパーPSTはバトルフィールドの中へと放り出された。
出口をくぐると、そこにはビルや住宅街が立ち並ぶ、まさに都市部のステージが広がっていた。
機体各部のバーニアを噴かせ、機体を安定させる。
周囲の状況を確認すると、ヨーイチは近場にあったビル群の中にへと着地した。
同時に、空中にあったカタパルトの出口が消えた。

「敵機の確認」

センサーウインドウを見て、敵機の居場所を確認しようとする。
だが、センサーには敵機の反応はまだなかった。

「…バイザー、セット」

ヨーイチが操縦桿を操作し、ジム・スナイパーPSTの機能の一つを呼び出す。
その直後、ジム・スナイパーPSTの頭部のバイザーが下ろされ、センサーユニットの光がともった。
ジム・スナイパーPSTの頭部バイザーには、全体的な索敵・狙撃性能を上げるためのセンサーユニットが増設されている。
バイザーを下ろした状態の場合、センサーの有効距離は通常の1.5倍となる。
無論元の狙撃用機能も搭載されており、万能機としての性能を一段強くする要因の一つとなっていた。
周辺の動きを確認しながら、ジム・スナイパーPSTがビルの間を歩く。
しばらくしていると、センサーに反応が見られた。

《2時ノ方向!反応アリヤ!》
「了解…っ!」

頭部バイザーはそのまま、ヨーイチはジム・スナイパーPSTのバーニアを噴かし、ジャンプさせた。
バックパックと各部のバーニアがジム・スナイパーPSTを支え、空中でとどまった状態を保つ。
手持ちのビームライフルを狙撃の状態に構えさせると、ヨーイチはセンサーとリイナの報告通り、二時の方向を確認する。
ビル群の向こう、そこには民家が並ぶ住宅街のある丘陵地帯となっていた。
その住宅街の一部、チラリと影のようなものが動くのをヨーイチは見た。

「…そこかッ!」

ロックオンの照準を影が見えた場所に定め、操縦桿のトリガーを引く。
瞬間、ビームライフルから一筋のピンク色の閃光が放たれ、その場所にへと一直線に伸びた。
ヨーイチはビームを照射させたまま、住宅街を薙ぎ払うように射線を横へ移動させる。
住宅街の家々が、ビームによって焼き払われていった。

「勘でやってみたけど…?」

ジム・スナイパーPSTの持つビームライフルには、射撃モードの切り替え機能が設定されている。
モードは二つあり、一つは通常形態も兼ねた一般的性能のビームライフル、そしてもう一つは長距離狙撃用のロングレンジライフルモードである。
通常形態・ノーマルの場合8発分のエネルギーがライフルに備え付けられているが、ロングレンジライフルモードの場合、それらエネルギーをまとめ2発分の威力として使っている。
連射はできるが少しだけ威力が低いノーマル、照射で大ダメージを負わせることが出来るが弾数が少ないロングレンジライフルモード。
これらの使い分けの必要が、この機体の特徴の一つであった。

「!」

照射によって焼き払われ、煙が立ち込めている住宅街からヒュッと影が飛び出した。
赤色のモノアイ、白寄りの灰色の機体色、そして左腕に装着されたガトリングシールド。
ほぼ無傷の状態に見える敵機―――グフ・カスタムが、丘陵地帯を下りこちらに向かってくるのが見えた。

「無傷!?避けたのか!」

ヨーイチはジム・スナイパーPSTを地面には着地させず、ビルの屋上にへとバーニアを噴かしながら降ろさせた。
狭い所では格闘系の機体の方が多少有利なため、おそらく地面に着地すれば、グフ・カスタムの恰好の餌食となってしまうだろう。
先ほどのシンのように…。

「ライフルは打ち切らないと、リロードが出来ないから―――」

ジム・スナイパーPSTのバイザーを上げさせ、そう思いながら次の動作を促そうとした瞬間、少し離れた場所のビルの谷間からヒュッと灰色の機体が飛び出してきた。
グフ・カスタムが、ビルの上に上ってきていた。

《見つけたぜ…スナイパー!!》

敵の選手の声とこちらがロックオンされたことを知らせる警告音が、ヨーイチの操縦席に響き渡る。
グフ・カスタムがガトリングシールドの銃口をジム・スナイパーPSTに向け、弾丸を発射する。
同時にビルとビルを飛び移りながら、ジム・スナイパーPSTの方にへと向かってきた。

「クソッ!」

ヨーイチはジム・スナイパーPSTのバーニアを吹かし、グフ・カスタムから距離を離そうとした。
[MMウェポン]のバックパックは、武装を搭載したウェポンバインダーとして機能している。
武装が増えるということはバトルにおいてはやはり有利になるのだが、バインダーなどの場合ガンプラの重量が重くなってしまう。
その分機動性は落ちてしまうが、[MMウェポン]の場合、バインダーには重量過多を抑えるためのスラスターが存在していた。
さらにバインダーのスラスター推力は高出力に設定されており、それらの役目を担うだけでなく、大幅とは言えないが多少の機動性の向上も実現されている。

「モード切り替え…ッ」

ジム・スナイパーPSTのビームライフルのモードをロングレンジライフルからノーマルへと切り替える。
機体を振り返らせ、ヨーイチはバックさせたままグフ・カスタムに照準を定めた。

「行けッ!」

トリガーを引き、ビームライフルを発射する。
残弾の4発すべてを打ち切り、そのままヨーイチはライフルのエネルギーの再チャージが始まったのを確認した。
4本の閃光がグフ・カスタムにへと伸びていく。

《…フッ!!》

しかし、グフ・カスタムはビームを寸前のところで回避し、そのまますべてのビームをよけ切った。
全弾外れ。やはり動く敵機にビームライフルは厳しいか。

《逃げてばっかりじゃあなぁッ!!》

グフ・カスタムがガトリングを発射しながら、ジム・スナイパーPSTとの距離をつめようとする。
数発当たりながら―――ガトリング系の場合一弾のダメージが少ないためある程度当たっても問題はない―――ヨーイチはなんとかグフ・カスタムから逃げようと、再び機体の方向を変えバーニアをより強くした。
ジム・スナイパーPSTは確かに機動性は高めのはずである。しかし、グフ・カスタムは明らかにそれに追い付こうとしている。
そして、ヨーイチは気になっていることが一つあった。

「リイナ、グフ・カスタムの反応…」
《…反応、ナインヤ》
「…やっぱり?」

機体情報のウインドウの一つ、センサーのウインドウをヨーイチはチラりと見る。
センサーウインドウには、ジム・スナイパーPSTを中心として、周辺の索敵の情報が円形に表示されている。
距離的にグフ・カスタムのマーカーがウインドウに映るはずなのだが、そこには、ジム・スナイパーPST以外何も表示されていなかった。

――――――――――さっきは表示されていたのに。

狙撃した際には確かにグフ・カスタムはセンサーに引っかかった。リイナの反応がその証拠だ。
しかし、気付くと敵機は近場になった途端センサーウインドウには映らなくなった。
センサーウインドウに映らなければ、ハロもうまく反応ができない。
索敵等の役目を担うことができるハロでも、そういうところはあった。

「なら、あの機体―–」

表示されない敵機について、ヨーイチの中で一つの考えが浮かび上がった、その瞬間だった。

《ヨーイチッ、後ロ!》
「!?」

リイナの電子音の声が響いた直後、バックパックにカツンと何かがくっついた音が聞こえた。
まさか、とヨーイチがジム・スナイパーPSTの後ろを確認する。
バックパックの右側のバインダーに、ワイヤーが取り付けられたアンカーが食い込んでいた。

《届いたぜェッ!!》

そのアンカーのワイヤーは、ジム・スナイパーPSTからそれほど遠くないところにいるグフ・カスタムの右腕の手首へと繋がっていた。
この距離まで敵機が近づいていることに、ヨーイチは驚愕した。
もうそんなに距離を詰められたのか…!?

「…仕方ないのか!」

ヨーイチはアンカーが食い込んでいる右側のバインダーをパージさせた。
ジム・スナイパーPSTから離れたバインダーが、アンカーによって引っ張られていく。
一瞬グフ・カスタムの手から逃れたジム・スナイパーPSTだったが、相手はそんなことを許さなかった。

《逃がさねえ!》

グフ・カスタムはそのままバインダーを引っ張り寄せると、アンカーを取り外すと同時にそれを蹴飛ばした。
蹴飛ばされたバインダーは、ビルの下にへと落ちていった。
それを気にせず、グフ・カスタムはガトリング・シールドに収納されていたヒートサーベルを抜刀し、その場から飛びあがりジム・スナイパーPSTにへと襲い掛かった。

「ッ!」
《間合いは取ったッ!》

ヒートサーベルを振りかざし、ジム・スナイパーPSTにへと切りかかる。
ヨーイチは機体を少しだけ横にずらし、グフ・カスタムの斬撃を回避すると同時に、機体をグフの方にへと向けた。
一度攻撃を外したグフ・カスタムだったが、すぐに次の斬撃をジム・スナイパーPSTにへとしかけた。

―――――早いっ!

ヨーイチはその動作の速さを見て、スナイパーPSTの腰に装着されているビームサーベルを抜刀するスキがないと確信した。
それは、明らかにこちらにとっては不利である状況ということである。

《遠慮はいらねえ!腹からかっ裂いてやるぜェーッ!!》

相手の選手がそう叫びながら、ジム・スナイパーPSTの腹部にへとヒートサーベルを突き立てようとした。
腹部はジム・スナイパーPSTのコクピット部分に相当する。そこが攻撃され致命傷を負えば、自動的に機体は爆散しバトルは敗北となる。
普通のバトルならそこまでで終わりである。しかし、今は――――。

「…ええいっ、クソォッ!!」

その行動は、ヨーイチにとってはあまり意識して繰りだした訳ではなかった。
ただ、この敵にやられたくない。このガンプラを壊させたくはない。そういう恐怖心と反抗心のようなものが、一瞬だけヨーイチの中で弾けた。
ヨーイチは半ばヤケ気味に操縦桿を操作し、ジム・スナイパーPSTのビームライフルを放り投げた。
直後、ジム・スナイパーPSTは両拳を重ね合わせ、ハンマーの形をとった。
コクピット部分にヒートサーベルの先端が届こうとしたその時、ジム・スナイパーPSTはその両拳を振り上げ、グフ・カスタムにへと一気に振り下ろした。

《ッ!?》

そのジム・スナイパーPSTの突然の行動に、相手の選手は対応が遅れた。
そのままジム・スナイパーPSTの振り下ろした両拳が、グフ・カスタムの右腕にへと命中する。
ヒートサーベルの軌道が反れ、腹部に軽い切り傷を負わせたものの、間一髪スナイパーPSTのコクピットを逃れる。
ヨーイチはハッとし、すぐに機体を後方にへとバックさせた。

「!」

両拳のハンマーが命中したグフ・カスタムの右腕を見たヨーイチは、その状態が意外に思えた。
ヒートサーベルを握る”右手”が、グフ・カスタムの足元にへと落ちる。
そのグフ・カスタムの右腕はもはや原型をとどめておらず、二の腕から前はバラバラに砕け散っていた。

《右腕がッ…!?》

ヨーイチは一瞬、目の前で何が起こったかわからなかった。
突発的な行動であることは覚えているし、確かにあの攻撃が直撃した手ごたえはあった。
だが、ジム・スナイパーPSTの打撃―――しかも武器を使わず―――にあそこまでの威力を出せるはずがなかった。
この機体は格闘機体でもなければ、そんなパンチなどの技を持たせてもいない。

《……てめえェーッ!!》

相手の怒号がヨーイチの周りに響く。
グフ・カスタムが残った左腕のガトリングシールドを振り上げ、こちらに銃口を向けた。
発射に身構えたヨーイチだったが、その銃口から弾丸は発射されなかった。
カラカラとガトリングが回り、そして止まった。

《弾切れか…!?》

そう相手選手が言いながら、グフ・カスタムが一瞬動きを止めてしまったのを、ヨーイチは逃さなかった。
操縦桿を動かし、ジム・スナイパーPSTのバーニアを吹かし上昇させる。
同時にヨーイチは、残ったウェポンバインダーの先端の銃口をグフ・カスタムの足元にへと向け、ビームを発射した。

《ッ!?》

ジム・スナイパーPSTのウェポンバインダーに収納されているビームライフルは、そのまま射撃ができるよう銃口だけを露出させてある。
今のような急な場面にて対応できるよう、加工してある部分だった。
ウェポンバインダーから放たれたビームがグフ・カスタムの足元に命中すると、その地面―――ビルの屋上が崩れ落ちていく。
MSが乗れるような耐久度であっても、ビームを何発か喰らわせれば破壊はできる。
ビルが崩れ落ち、グフ・カスタムがビルのがれきと共に落ちていく。
同時にジム・スナイパーPSTも、ビルの下にへと落ちていった。

「…フウッ!!」

ヨーイチは再びジム・スナイパーPSTのバーニアを噴かせ、地面に落ちる寸前で機体を安定させ、着地させた。
ビルが崩れ落ちたことによって、辺り一面に砂煙が待っている。
瓦礫の中、グフ・カスタムがそこに埋まっていた。

《クソッ!こいつッ…!?》

瓦礫に機体を埋まらせ、そこからの脱出に苦戦するグフ・カスタム。
今がチャンスであることはそうだが、ここで手を急かしてはダメだ。

「リイナ、ライフルは…!?」
《…アソコダ!》

ピピピ、とセンサーがビームライフルが落ちている場所を伝える。
機体をそこにへと向かわせ、ヨーイチはそこに落ちていたビームライフルを回収した。
先ほど放り投げたビームライフルはビル街の道路にへと落ち、さらに瓦礫にも埋もれず無事のままだった。
そのままバーニアを強くし、ジム・スナイパーPSTはその場所を離れていった。

《ヨーイチ!今アノ機体は…!》
「わかってる。でも、今はいい」

確かにあそこで仕留めれば、ヨーイチが勝者となる。
だがそれは…何もできずただ一方的に攻撃するそれは、相手選手がシンに仕掛けたソレとほぼ同じようなことであった。

「…それに、試したいこともある」

少しだけ後ろを見て、グフ・カスタムの様子を伺う。
意外にも早く、グフ・カスタムはあの瓦礫の中から脱出し、中に埋もれていたヒートサーベルを回収していた。
ジム・スナイパーPSTがバーニアを噴かし、ビル街の間を前傾姿勢のような状態で滑っていく。
ヨーイチはセンサーウインドウの表示を消し、元々表示されているものとは別のもう一つの武装管理のウインドウを開く。
同時にジム・スナイパーPSTの腕がその形を崩し、中から細いサブ・アームを展開し始めた。

――――――僕の考えが当たれば、あの機体は…。

そう思いながら、ヨーイチはこちらを追い始めるグフ・カスタムの様子を確認し、再び前面にへと顔を向けた。

 

つづく。

 

 

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