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GPBB外伝 BEAST BATTLER`S プロローグ

《Live or die!今回の試合も過熱しているぞォッ!!》

ホール中に実況者の声が響き、それに囃し立てられた観客たちが盛り上がっていく。
大きくもないが小さくもないホールの壁沿いにずらりと並ぶ観客席に、ほぼ寿司詰めのような状態でホール中心のソレを見守る観客たちがいた。
中心に置かれた機械がホログラムを展開し、その中でヒト型のロボット同士が戦いあっている。
星々が広がる宇宙空間。そこにいたのは紺色の機体と灰色の機体だった。

「くっ…?」

本心を言ってしまえば、焦っている。
観客たちの野次混じりの声を聞きながら、トドロキ・カオルは思った。
ホログラムが形成したモニターらがカオルを囲み、彼が操る紺色の機体――――ジム改[轟]の状態をそれぞれで映し出している。
全てがホログラムで構成された、いわゆる疑似コクピットにある球体の操作ユニットを動かしながら、カオルはモニターの一つ[残弾表示]の部分を見た。

[ミサイルランチャー:2/6][マシンガン:20/60/0][頭部バルカン:FULL][ビームライフル:2/5/0]…

《どうした!いつまでも逃げてんじゃねーぞ!》

その声にカオルがハッと前方のモニターを見ると、カーボンブレイドを構えた灰色の機体―――ティエレンがバーニアを噴かし、こちらに向かってきているのが映し出されていた。
武装スロットのビームライフルを選び、ライフルが装着されたジム改の右腕をティエレンにへと向ける。
瞬間、二連装の銃口からピンク色のビームが発射され、ティエレンへ一直線に向かっていった。

《そんなものではなァッ!》

性能的にはそれなりの威力が保証されるビーム系統の武器。だがそれらは、当たれば強いが当てるのは難しい。
2発分のビームがティエレンにへと伸びていくが、ティエレンはバーニアを細かく操作し、微妙な差でそれらを回避していった。
無意識のうちにカオルは舌打ちをした。これでビームライフルは使えず、おまけでついているシールドとしてしか使えない。

「ヒットアンドアウェイってのも、やり過ぎるとこうなるよな…!」

カオルが操縦するジム改[轟]は、射撃武装を主兵装とした機体である。
相手が近接武器で固められた格闘機であったため、カオルは射撃武器を駆使しての有効射程ギリギリで攻撃、直後距離を離すという戦い方をしていた。
だが、相手の機体は予想以上の機動力を見せ、カオルを圧倒した。
結果射撃武装の残弾が減り、さらに相手も苛立たせているという結果だった。

《オリャアァァッ!》

ビームを回避したティエレンは、そのままジム改にへと一直線に突っ込みカーボンブレイドの斬撃をくらわせようとする。

「くそっ!」

カオルはジム改のバーニアを噴かせ、上の方へと回避しようとしたが、間一髪遅かった。
ティエレンのカーボンブレイドの振り下ろしが、ジム改の左足のクツにへと命中する。

『脚部損傷!脚部損傷!』

機体の状態を知らせる”彼”の電子音が、カオルのコクピットにへと響く。
それと同時に、普段のバトルでは見慣れない、もう一つ余計に付け加えられたウィンドウの状態が動いた。

「ッ!」

そこに映し出されていたのは、羽交い絞めにされたかのように複数のミニアームで掴まれたジム改の姿だった。
損傷が確認されると、数あるミニアームの一本が左足クツの部分に伸び、直後、そのミニアームの先端から閃光が放たれた。
カオルがそのウィンドウから目を反らす。眩しかった、ということだけが理由ではない。

――――落ち着け、クツならまだ…。

そう考えている内に、ティエレンが数秒かからないうちに体勢を立て直し、間髪開けず再びジム改に切りかかろうとした。

《もう一発ゥッ!!》

先程の位置でそのままのため、ティエレンとジム改の距離は限りなく近い。
だが、それが逆に自分にとってチャンスかもしれないということを、カオルは気付いていた。
一か八か。やってみる他はない。

「…ミサイル!残り全部だ!」

カオルはジム改の左腕に装着されたミサイルランチャーを、ティエレンに向けて発射した。
突然の動き、そして至近距離の発射だったために、ティエレンは対応が遅れた。
へ型のようなボックスから放たれたミサイル二発は、一発は胸部にのめり込んでいるように見える頭の部分、もう一発は右肩にへと命中した。
爆風が発生し、ジム改にも衝撃が伝わる。

《何!?》
「ぐうっ…!」

一度ティエレンから離れたジム改は、右腕のシールドで爆風を防ぎ、同時に空になったミサイルランチャーをパージした。
頭部と右肩を失ったティエレンは体勢を崩し、残った手足を駆使して機体のバランスを直そうとしている。

《メインカメラがやられた!?つーかそれどころじゃ…!》

この宇宙空間のステージでは、無重力の補正というものがかかっている。
地上がモチーフのステージとは異なり、立ち回りや操作にもある程度工夫が必要となってくる宇宙ステージにおいて、手足は機体の方向を変える、そして機体そのもののバランスを支えるという役割も担っていた。
故に、右肩を失ったティエレンが体勢を直すのには普通より時間がかかる。
加えて、ティエレンの肩部には姿勢制御用のバーニアがあるため、左右の推力のバランスがとれなくなり、余計そうなってしまう。

―――チャンスか!?

カオルは武装をビームサーベルに切り替え、ジム改のランドセルに装着されているサーベルのグリップを引き抜かせる。
グリップからビームの刃が形成され、ビームサーベルの準備が完了した。

「うおおおおおっ!!」

カオルは勢いを声に出し、サーベルを構えさせたジム改を突撃させた。
ティエレンとの距離を一気につめ、胸部に狙いを付ける。
なんとか機体のバランスを戻したティエレンだったが、既に遅く、それまでだった。

《やべえッ!?》

ティエレンの操縦者が気付いた直後、ジム改のビームサーベルの先端はティエレンの胸部に突き刺さり、一気に背中にへと貫通した。
残った左手でジム改を離そうとしていたが遅く、その左手はジム改に添えるように止まってしまった。
ティエレンの動きが、完全に止まった。

「……」

カオルはビームサーベルを抜き、そのままティエレンから引き下がる。
サーベルの貫通痕からチリチリと火花を散らせ、静止していたのもつかの間、ティエレンは爆散した。
爆発の残骸がパチンパチンとジム改に当たる。しばらくその爆発の閃光を、カオルは見ていた。

《…!!》

一瞬、ティエレンの操縦者である相手の声が聞こえたような気がしたが、直後の観客らの歓声によって打ち消された。

《BATTLE END!勝者はAサイド!トドロキ・カオル選手だァーッ!!》

再び実況の声が響き、歓声もより強くなる。
同時にホログラムが徐々に消えていき、周囲がはっきりとわかるようになっていった。
ホールの壁にある巨大モニターに、『WINNER トドロキ・カオル』の文字が表示されている。

「…終わった、のか」

モニターを見上げ、カオルがつぶやく。
額に流れていた汗をぬぐい、先程までの緊張が少しだけ緩んでいるのに気づいた。

「俺のガンプラは…!?」

ホログラムを展開していた機械を挟んで向こう側、ティエレンを操縦していた相手の選手が声をあげる。
操縦席に当たる場所の左側、そこに設置されている”ボックス”を開いた相手の選手は、その中身を見て止まった。
それを見たカオルは、自分の方にもある”ボックス”を同じく開き、中を見た。

「ッ…!」

“ソレ”を縛りあげていたアームを外し、”ボックス”の中から取り出す。
手に取り、左足のクツにあたる部分に付けられた”損傷跡”を触ると、微かに熱いのがわかった。

「…ごめんな」

その左足以外にも、かすり傷程度の損傷がつけられたジム改[轟]のガンプラを見て、カオルは言った。
その直後だった。

「てめえッ!!」
「…!」

途端、カオルは胸倉を掴まれた。
ジム改の状態を確認していたため、向こう側から相手の選手がこちらに向かってきていることに、カオルは気付いていなかった。
相手選手の怒りの表情に、息を呑む。
空いていた片方の拳が上がるのを見たカオルは、殴られるのを覚悟した。

「…なんだよ!?」

が、そんな衝撃は顔にぶつかってこなかった。
殴りかかろうとしたのを見たのか、いつの間にか駆け寄ってきた黒服の男たちが、相手選手を抑え込んでいた。

「当会場での相手選手に対する暴力行為は禁じられております、抑えてください…」
「離せゴラ!…クソッ!」

黒服の男にそう言われ、相手選手はカオルを離した。
少し面を喰らったカオルだったが、直後、相手選手のポケットから何か落ちたのに気が付いた。

「!」

相手選手が落したのは、灰色の塗装が施された”残骸”だった。
今落ちたモノだけではない。バーニアのパーツ、腕のパーツ、そして粉々になった胸部。
黒服ともみ合っているうちに落ちたのだろうが、まさしくそれは先程まで戦っていたティエレンのものであった。
相手選手もそれに気付き、慌ててそれらを拾い上げる
まだ形の残っているパーツをポケットに押し込み立ち上がると、その様子を見ていたカオルを睨んだ。
カオルは、思わず目を反らしてしまった。

―――俺だって、そんな風にはさせたくなかったんだ。

しばらくそのままの状態が続いたが、相手選手が「クソが」と吐き捨て、ホールの退場口へと向かっていった。
一連の様子を見ていた観客席が、どよめいている。

《えー、あー、まあ、ココも始まって間もないし?こういうアクシデントだって起きちゃうんだよね、アハハ》

実況が適当に茶化すと、観客席から野次混じりの笑い声があがった。
カオルがふと観客席の方に目をやると、観客たちの様々な様子がみてとれた。
多くの観客の中で、持っていたチケットのようなものを握りしめ喜ぶ人、そのチケットを破り去りなにかをぶつくさ言いながら会場を去る人…。

「いや、見事だったよ」

突然声をかけられ、その方向を向くと、髪がオールバックに施された金髪の男が軽い拍手をしながらこちらに向かってきていた。
カオルは再び出てきていた汗をぬぐい、姿勢を少しだけ正す。

「…ギリギリでした、バトル中も焦ってましたし」
「でもその程度の損傷で済んだのは君が初めてだ。ま、始まってばっかりだけどね…」

金髪の男は、カオルが持つジム改を見て言った。

「私はね、そういった緊張感、それから出てくる掛け合いなんてのも、”ここ”の魅力になってほしいのさ」

その言葉を聞き、カオルはバトル中の自分自身を思い出した。
考えてみれば、確かに自分のガンプラがああなってしまうという、いってしまえば恐怖のようなものも感じていた。
だが、それとは違う別の思いも微かにあったような気がした。

「君に賭けられるガクも貰える分も大きくなっていくが、次はどうするかい?この―――」

壊すか、壊されるか。生き残るか、死ぬか。
普段のガンプラバトルでは感じない感覚。
それらを思い出すうちに、カオルは自分の体にゾクリと身震いが走るのを感じた。
一瞬、そんな自分に驚いたが、正直言ってしまえば、少しだけわかっていたような気もした。
あの人に言われたからかもしれない、だけど…。

「ビーストバトラーズを」

…だけど、悪くない。
自分に賭けられた金額が増えていく様をモニターが映し出しているのを見ながら、カオルはそう思った。

 

 

仮想空間にて自らが作り上げたプラモデル、「ガンプラ」を操作し戦う競技「ガンプラバトル」が流行した近未来。
専用電子マネーのGPが出てくるまでになった現象であったが、一方その中で、ガンプラバトルを利用した犯罪も増加しつつあった。

これは、その一つ・ビーストバトラーズにて繰り広げられるガンプラビルダーたちの物語…のつもり…。

 

 

 

 

プロローグ 対戦記録:No.BB00020

 

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