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GPBB外伝 BEAST BATTLERS Chapter.1 第五話:見えない”見破り方”

「試合はどうなっている?」

画面の光だけが灯る暗い一室、モニターで試合の様子を見るオペレーターに男が話しかける。
暗い場所で長時間モニターに向かっているというのは、確実に目に悪い。
明かりをつければ多少改善されるが、ここの事情上そんなわけにはいかないのが現状だった。

「現在キジマ選手の機体が損傷、右腕が破壊されています」
「右か…」

バトルにおいて利き腕が使えなくなるのはとても分が悪い。
操縦桿を通しているとはいえ、使うのは人間である。癖というものは機体の動きや立ち回りにも反映されるのだ。
だがあのグフ・カスタムを駆る選手――キジマ・レンタロウは、おそらくそれだけでは屈しない。

「俺はわかる…」
「?」
「いや…Bサイドのあの少年は?」

男の言葉に、オペレーターがキーボードを操作しモニターの映像を切り替える。
数秒して、すぐそばの別のモニターにBサイドのバトルスペースの様子が映し出された。

「Bサイドの…フキヨセ選手の機体には目立った損傷は見受けられません。あのバックパックの装備もパージしただけで破壊されているわけではないですし、多少細かい傷跡があるくらいです」

Bサイドの選手、フキヨセ・ヨーイチの機体の状態が表示される。
見た限りではジム・スナイパーⅡを改造したガンプラのようである。腕や頭部が変更されているが…。
それらを一瞥すると、男はモニターに映るフキヨセ・ヨーイチの様子を見た。
グフに追われてからの無駄のない操縦。少しだけ汗が出ているが至って落ち着いているように見えるその表情。
先ほどはグフに接近されるも、間一髪でその状況を免れていた。
自らの装備を捨て、サーベルを抜刀せず瞬時に格闘を挑み、そして右腕を破壊した。
だがその行為は、彼の今の表情と打って変わって、あまり考えて行動したようには見えなかった。

――――まあ、これは俺が思ってることだけれど。

右腕を失ったがまだ勢いのあるグフ・カスタム、そして距離を離そうとするジム・スナイパーPST。
彼らの戦いは、ビル街の中にへと持ち越されている。閉所の中では、格闘機の方が有利にも思える。
…だが。

「おそらく勝負はもうすぐ決まる」

あえて、彼がビル街の中での戦いを選んだのなら…。
会場の様子を伝えるモニターからは、ホログラムの中で繰り広げられる戦いを見て歓声を上げる観客らの姿が見える。
いつもより少ない人数だが、その盛り上がりはこの部屋にも伝わってきていた。

 

 

Chapter.1 吹き寄せる風
第五話:見えない”見破り方”

 

 

 

Aサイド、物理破壊確認のウインドウに、右腕が破壊された”グフ・カスタムのガンプラ”が映し出されている。
しかしそれを気にせず、キジマ・レンタロウは機体を動かし、ビルの瓦礫の中に埋もれていたヒートサーベルを掘り出した。

「チッ…」

破壊された右腕を見て、レンタロウは舌打ちをした。
今いるようなビル街などの障害物の多い場所では、右腕に装備されていたアンカーが役立つ。
アンカーを使った立体的な機動・移動の短縮などが出来るためだが、破壊されてしまった以上、この”足”を使うしかない。
元々この機体は足が速いようにしてある。いや、そうするように”できた”というべきか。
瓦礫から出ると、グフ・カスタムは機体の重量を軽くするため、シールドのガトリングをパージした。
シールドの下にも小型の3連装のガトリングがあるので、射撃に関しては問題はない。それに落とした武器はセンサーにも映るため、後で回収したい時に回収すればいい。
偶然足元にジム・スナイパーPSTのモノであるバインダーが落ちていたが、気にはしなかった。
レンタロウはセンサーウインドウを確認し、敵機――――ジム・スナイパーPSTの位置を確認した。
ビル街の中を移動し、ひたすらこちらから距離をとろうとしている。

「アイツッ、まだ逃げるかよッ!?」

ステージのオブジェクトとしてあるビルは、通常のMSの2倍ぐらいの高さがあり、アンカーを失っている以上上から飛び越えるというのはあまり現実的ではなかった。
残された左手にヒートサーベルを持ち、グフ・カスタムはジム・スナイパーPSTのいる方角にへと走り始めた。
あっちもバインダーが一つ無くなっている。おそらく機動性は落ちているはずだ。

「舐めやがって…」

こちらが攻めの一方、あちらは距離をとり続けようとする姿勢に、レンタロウは苛立っていた。
最近はあまり感じていない苛立ちだった。ガンプラバトルで苛立つことはある。それによって負けることもある。だが、今回はそれに加えてさらに苛立つ要因があった。
それは、相手が自分よりも年下の子供であるということだった。

――――ガキが調子に乗ってさ。

レンタロウは、自身がこのビーストバトラーズへの出場が五回目であることをふと思い出していた。
だが、今回を除きそれら4回ともすべて一回戦落ちである。
度々そのことをいじられ、他の出場者から小ばかにするような発言を浴びせられていた。
しかし今日の出場で、レンタロウは初めて一回戦を突破することができた。相手は相手だが、それは事実である。
ここまでここに執着する理由はあるだろうか、とレンタロウは一瞬だけ思った。だが、それはすぐ打ち消された。
センサーウインドウでしばらく止まっていたジム・スナイパーPSのマーカーが再び動き出し、こちらから離れていく。

「この…!」

レンタロウは一度走るのをやめ、ジム・スナイパーPSTの行く先を確認しようとした。
ビル街から出ずにこちらから逃げようとするジム・スナイパーPSTだったが、何を狙っているかはレンタロウにはまだわからなかった。
ふと、バトルスペースの隅に表示されているタイマーをチラリとチェックする。
バトルが始まってからはさほど時間は経っておらず、もうすぐ制限時間の半分を過ぎようとしている。
一瞬、レンタロウの中である考えが浮かぶ。

――――まさか。タイムアウトを狙うなんてことはな。

が、すぐにその自身の考えを自嘲した。
ガンプラバトルでは、決着が付かなかったり大会用の公式ルールとしての存在だったり等のための制限時間が存在する。
通常一般は15分程度――――大体のバトルはこれで決着が付き、故に時間を気にしない人も多いためあまり言及しない場合が多い――――だが、ビーストバトラーズでの制限時間はその1/3の5分で設定されている。
ここまで短いとかなり戦いにくいが、やはりそれも緊迫など言ったビーストバトラーズの雰囲気が形成されている要因の一つでもあった。
タイムアウトになると、お互いの損傷程度によって勝敗が決まる。その損傷の度合いはビーストバトラーズの運営が決めているらしいが、開示はされていない。
つまり、こちらのガンプラを破壊しなくても、破壊されなくても、勝てる方法はあるのだ。
だが、それがどういうことかは、レンタロウは良く分かっていた。

《制限時間、残り二分半を切っています!キジマ選手のグフ・カスタムは右腕を失い、フキヨセ選手のジムはバックパックの片方を無くしているっ、この試合、どうなるのかッ!?》

いちいちやかましい、とレンタロウは心の中で突っ込んだ。そもそもここの実況は必要なのだろうか。ただうるさいだけじゃないか。
そうしょうもないことに小突いても、イライラがつのるだけだ。
そう思いながら、レンタロウがジム・スナイパーPSTのマーカーを目で追っていたその時だった。

「ッ?」

レンタロウはマーカーの動きを見て、ジム・スナイパーPSTがどこに向かいつつあるのかがなんとなくわかった。
ジム・スナイパーPSTのマーカーは、先ほどパージしたガトリングの位置に徐々に近づきある。
先ほどビルが崩壊した場所であるが、さらにそこにはあの機体がパージしたバインダーもあった。

「まさか」

レンタロウはグフ・カスタムを翻させ、再びあのビルの場所にへと向かわせた。
ジム・スナイパーPSTはあのバインダーを回収しようとしているのではないか。バインダーを再び装着し、また距離を離そうとしているのなら…。

「わかりやすいなぁ、オイッ!」

思わずレンタロウは口に出し、グフ・カスタムをより速く走らせる。
幾つかの曲がり角を曲がってしばらく、あのビルの崩落跡が見えてきた。

「…見つけた」

レンタロウの読み通り、その場所にジム・スナイパーPSTの姿があった。
腕から細いアームを展開し、落ちているバインダーを拾い上げようとしている。気付いていないのか、こちらに背を向けたままだ。
あちら側のセンサーにはグフ・カスタムの反応は映っていないはず。
おそらくジム・スナイパーPSTは、バインダーを回収するためにグフ・カスタムを一度バインダーのある位置から離そうとしたのだろう。
こちらも姿を見せていないため、あちらはどこの位置にいるかはわかっていない。しかし、あのスナイパーはちょっとした誘導を仕掛け、回り込んであそこに行こうとしていたのだ。

「それは博打だろッ、スナイパー!!」

レンタロウはグフ・カスタムにヒートサーベルを構えさせ、ジム・スナイパーPSTの方にへと突撃させた。
弾丸で気付かれかねないので、ガトリングは撃たずそのまま接近する。

「いただきィー!!」

ジム・スナイパーPSTとの距離が迫り、ヒートサーベルを振り上げ後ろから斬りかかる。
こちらに気付いたのか、スナイパーPSTが振り向こうとするのが見えたが気にしない。
この距離なら確実に決定打が打てる。そうレンタロウが思っていた――――。

「!?」

その時だった。

《どおおおっ!!》

レンタロウの操縦席に、そんな大声が響いた。
直後、グフ・カスタムがヒートサーベルを振り下げようとした所に、ジム・スナイパーPSTがこちらに振り向く。
その手元、ジム・スナイパーPSTは拾い上げようとしていたバインダーを両手で抱えていた。
レンタロウがそれに気づくが遅く、ジム・スナイパーPSTは低姿勢になり、そのバインダーでグフ・カスタムに殴りかかった。
横から仕掛けられたバインダーの打撃が、グフ・カスタムの腰部にへとヒットする。

「アアッ!?」

その衝撃はグフ・カスタムだけでなく、レンタロウがいる操縦席にも伝わってきていた。
打撃が命中した腰部が砕け散り、グフ・カスタムが一気にバランスを崩す。
普通なら”砕け散る”ということはありえない。だが、その打撃はグフ・カスタムにとっては致命的な攻撃だった。
腰部が形を成さなくなったことによって、グフ・カスタムの脚部と上半身がバラバラになる。
上半身が地面に落ち、グフ・カスタムの本体は胴体だけとなった。

「な、情けない…」

地面を這うグフ・カスタムが、目の前にて自らを見下ろすジム・スナイパーPSTを見る。
展開していた隠し腕―――フォールディング・アームを折りたたみ、そのバイザーを光らせた。

《…やっぱり》

一瞬、ジムが喋ったように聞こえたその声は、ジムの操縦者――――相手の選手のものだった。

《そのグフカスは、極端に装甲が薄くなってるんだ》

相手の言う通りだった。
レンタロウが使うグフ・カスタムは、バーニアの推力や歩行速度等の機動性に性能が割り振られている。
ワイヤーによる立体機動や走るだけで相手の機体に追い付く等、その割り振りの恩恵は十分にあった。
だが、機動性を上昇させた代わりに極端に装甲の強度が弱くなってしまった。
そのため、物理で殴る打撃攻撃などの技を持っていない機体の攻撃であっても、悪ければ致命傷になってしまう。
先程のジム・スナイパーPSTの”ハンマー”や、今のバインダーの殴りかかりのように…。

《だからさっきみたいな打撃や、今みたいな殴りかかりでも決定的なダメージを与えることができる》
「…確かにな」
《だけど、その分機動性は段違いに高い。こっちも対応するのが大変だった。それに加えての…ステルス》

さらに、この機体には特殊機能として”ステルス機能”を付与してある。
ステルス機能を持つ機体は、敵機との距離がある一定になった場合、敵機のセンサーにまったく映らなくなる。
この機能を活かし、敵機に気付かれず忍びより不意打ちをかける、などと言った芸当が可能となった。
前の試合のヤツは不意打ちに引っかかったが、コイツはそうじゃなかった。レンタロウはそう思った。

《こういった障害物の多いステージでは、ステルス機能はかなり活かされる。隠れて不意打ち、なんてね》

相手選手が続ける。

《だから僕は、わざとわかりやすいような動きであえてこちらに誘導しようとしたんだ。制限時間も少ないし、バインダーが一つなくなってるから一気にケリを付けようと仕掛けてくると思った》
「…それで俺は、まんまとそれに引っかかったってワケか」
《…そうみたい…》

一発やられた、とレンタロウは思った。
レンタロウが読んでいたモノは、相手の選手が仕掛けた”エサ”だったのだ。
それにレンタロウは、釣られてしまった。

「…フッフ、ハハハ…」

今の状況、そして相手の選手のソレを聞き、レンタロウは笑ってしまった。
苛立っていた相手に、ハメられてしまったのだ。
ようやく一回戦を勝ち抜いた、その直後のバトルで…。

「ふざけんじゃねえよ…」

レンタロウは、小声でそう言った。

《…アンタも》

相手選手が再び話し始める。

《アンタも、ガンプラが壊すか壊されるかって、そういう雰囲気を楽しんでるのか?》
「…!?」

相手選手が話したそのことに、レンタロウは拍子抜けした。
それはここにとって至極当然のことだからである。

「ッハハハハハ!」
《!》
「当たり前だろ?そんなの」
《ッ…》
「さっきのヤツのことか。アイツもアイツ、その雰囲気に飲まれてああなった――――――」
《!!》

レンタロウがそう話す途中、ジム・スナイパーPSTのビームライフルの銃口がグフ・カスタムに向けられた。
…ご名答か。やっぱりお友達ってヤツなんだな。

《僕はわからない…ガンプラの壊し合いで楽しむ奴らなんて…》
「…」
《でも、それが間違ってるとは僕は思う。だから僕はお前を許せない。例え、ガンプラというものが自由であっても…》

もはや地面を這いずることしかできないグフ・カスタムにとって、今の状態は完全にツミだった。
武器は左腕の小型ガトリングがあるが、それで反撃できるとは思えない。
ジム・スナイパーPSTがすぐにでもライフルで打ち抜けば、バトルは終わる。

《だけど》

だが、ジム・スナイパーPSTは発射も何もせず、ビームライフルを下ろした。

《…シン、ごめん》

小声だったが、レンタロウはその相手選手の声を、確かに聴いた。

《BATTLE END!!》

レンタロウの正面にそう書かれたウインドウが現れる。
ハッとタイマーを見ると、「00:00」の表示がそこで点滅していた。

「時間切れ…!?」

レンタロウが握っていた操縦桿が消え、次々と周囲のホログラムが消えていく。
同じくして、周りの声が聞こえてくるようになってきた。

《あーっと!!ここでタイムアップッ!フキヨセ選手優勢のままっ、バトル終了となりますッ!》

ホログラムが完全に消えると同時に、観客たちの呆れの声が聞こえてきた。
それもそうだ。賭けた勝負に決着が付かなければ、面白くはない…。
ボックスを開け、中のグフ・カスタムのガンプラを確認する。腰は粉々に砕け、右腕は原型すら残っていない。
不幸中の幸いか、腰から分離した脚部は細かい傷が残っているだけでそのままの状態だった。

――――――相変わらずここの破壊は徹底してやがる。

レンタロウは、それを4度体験している。

「どうしたキジマァ!いつも通りか!」
「結局倒せなかったじゃない!」

観客席から嘲笑混じりに野次が飛んでくる。
これももはや、レンタロウにとっては慣れたものだった。

「うるせえなッ!いつもかもよ…!」

そう怒鳴りながら、レンタロウはBサイドの選手の方を見る。
少しだけ顔を俯けていたため、表情はうかがえなかった。

「チッ…」

レンタロウは舌打ちをすると、ハロを接続部から取り外しその中にグフ・カスタムのガンプラを入れ始めた。
同時に、ホール上部の大型モニターの映像が切り替わった。

《勝敗が付かなかったため、ガンプラの損傷度で勝敗が決められるぞ!映像オープン!》

実況がそう言うと、観客席からブーイングが聞こえてきた。
無理もない。賭けには終わりが付けられるが、ここのヤツらの大半はそんなことを見に来たのではない。

《まあ仕方ないでしょ?フキヨセくんはさ…ンンッ失礼!では結果を見てみよう!》

映像が半分ずつ映し出され、一つはグフ・カスタム、もう一つはジム・スナイパーPSTの損傷部位を示したものだった。
バトルで勝敗は決まらず、お互いの損傷度で勝ちが決められる。決着はつかないが、賭けにはちゃんと終わりがある。
無論、グフ・カスタムの方が損傷部位は多かった。

《損傷度は…グフ・カスタムの方が上!よって今回の勝者は、ジム・スナイパーPST!フキヨセ・ヨーイチ選手となりましたァーッ!!》

実況の盛り上がりの反面、観客席からはちょっとしたざわめきと乾いた拍手がこえるだけだった。
それらを聞きながら、レンタロウはハロの口を乱暴に閉じる。傷だらけの緑色のハロは、何もしゃべらない。
ハロを抱え退場しようとした直前、レンタロウは再びBサイドの方をチラリと見た。
相手のジム・スナイパーPSTの操縦者―――フキヨセ・ヨーイチが、ボックスから出したガンプラを見つめていた。

―――――あんな奴に負けたか。

バトルでは引き分けだった。しかし、あの状況は確実にあの子供が勝っていた。
すぐに負けるのはいつも通りだったが、それまで感じたことのない悔しさが、レンタロウの中にあった。

――――――いずれアイツもあのガキのようになる。絶対に…。

そう思い、レンタロウは野次を浴びせられながらホールを後にした。

 

つづく。

 

 

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