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GPBB外伝 BEAST BATTLEARS Chapter.2 第九話:招かれる”人”たち

ガンプラバトルのリプレイを見ることは、ヨーイチにとっては珍しくもなかった。
シンが時々探してきては見せてくるし、あそこ―――ビーストバトラーズに入ってしまったのもそれが発端である。
家にはリプレイ専用HDDを持つぐらい―――――立体的に再現するため、容量がどうしても大きくなる――――なのだが、今見ているリプレイだけは、保存を迷っていた。

《オ、オイ!やめろって!いくらなんでも…オアッ!》

ステージは宇宙空間。3機のジェガンが、オレンジ色の機体と戦っている。
だが、既に2機のジェガンが撃墜され、残る1機が必死になって敵機と戦う状況となっていた。
その2機の破壊のされようは尋常ではなく、1機は頭をカチ割られ、両腕の関節パーツがむしり取られたかのように抉られ、残りは切り刻まれ粉々になっている。もう1機はこのジェガンとは違い、運良く――――といえばいい―――胸部のコクピット部分を一刺しされ、一瞬で撃墜されていた。
残ったほぼ無傷のジェガンが、ビームライフルをオレンジ色の機体に向かって撃つ。
オレンジ色――――見る限りではヅダのカスタム機とも見れるその機体は、ジェガンから放たれたピンク色の閃光を難なく回避していった。

《あり得ねえ、なんであんなにスピードが出てるんだ…!?》

ジェガンの操縦者の言う通り、オレンジ色のヅダの機動性はかなり高いように見えた。
元々ヅダは、原作でも破格の機動性を持った機体として登場する。それに加えて、このヅダの両肩には巨大なブースターが装備され、その機動性をさらに向上させている。
その分ピーキーな性能となるはずだが、このヅダを操るアリカワ・テイコ――――――だと思う――――――は、難なくそれを動かし、そして3人を相手にしても圧倒していた。
そして、その機動性だけが、3人を圧倒しているわけではなかった。

《当たらない…当たらない…!?》

ひたすらライフルを撃つジェガンだったが、すべて回避され弾切れとなってしまった。

《こうなりゃヤケだァァッ!!》

ジェガンがライフルを放り投げ、シールドのグレネードランチャーを斉射しながら、腰からビームサーベルを取り出し展開する。
ヅダはそれをも回避すると、両手で持っている柄の長いヒートホークを構え、ジェガンにへと猛スピードへ迫った。
同時にジェガンもバーニアを吹かし、迫るオレンジ色の機体にへと突撃する。
お互いが肉薄しそうになった瞬間、両機は一気に手持ちの武器を振り下ろした。

《くっ!》

切り結ぶ瞬間、サーベルとヒートホークから出る閃光が、薄緑の機体とオレンジ色の機体を照らす。
お互いゆずらない状態のまま数秒が過ぎたが、ヅダがヒートホークを構えたままジェガンの股間に蹴りを入れた。

《痛えっ!……いやっ、違う!?》

瞬間、一気にバランスを崩したジェガンを見逃さず、ヅダがヒートホークでその両足を切断した。
間髪入れず柄の長いヒートホークを放り投げ、足に装着してある普通のヒートホークを取り出すと、両足を失いジタバタする薄緑の機体の頭部をつかんだ。
ピンク色のモノアイをぎらつかせながら、ヅダは一気にその頭を引っこ抜いた。

《ギエアッ!!》

頭部を失ったジェガンが首元を抑えていたのもつかの間、ヅダがヒートホークで目の前の敵機を切り刻み始める。
単に切り刻むだけではない。斬撃によってついた傷跡に指をねじ込み、装甲を剥がしていく。
コクピット部分には手を付けず、残った肩部、腰部から徐々にぐちゃぐちゃにしていった。

《ヒ、ヒエッ、アッ……》

ジェガンは薄緑の達磨と化し、操縦者が恐々とした震え声を出す。
胸部だけが残った薄緑の塊のコクピット部分に、ヅダはヒートホークを突き立て、引き裂いた。
チリチリとスパークを散らして数秒、ジェガンは爆散した。
バラバラになった機体が漆黒の宇宙に漂う。無傷のままのオレンジ色のヅダのモノアイが、爆炎の中に揺らめいていた。

「……」

《BATTLE END》の文字と試合結果が表示される。見た通り、3機のジェガン相手にヅダ1機が勝利した。
いつの間にか出ていた汗を、ヨーイチは拭った。

「リイナ、もういいよ」

ヨーイチの呼びかけと同時に、宙に浮いていたリイナが《アイヨー》と口を閉じ、ホログラムの展開を終える。
周囲の風景が、宇宙空間から見慣れた自室にへと戻った。時計は午後8時を示している。
ヨーイチは椅子の背もたれに寄りかかり、軽いため息をついた。

「……」

今のバトルによって、ヨーイチは戦慄すら覚えた。
尋常じゃない撃破の仕方。いや、撃破とも称しがたい、まるで破壊のような…。
だけど、この戦慄はつい最近も感じたものに似ている。
リプレイとは違い本当に目の前で繰り広げられた一方的破壊。盛り上がる周囲の中で、一人眺めるしかなかった…。

「まるであそこの戦い方だ」
「あそこってどこだよ」
「あそこってのは…って!?」

独り言に突然問いかけが飛んできて、ヨーイチは思わず驚いた。
ホログラムでわからなかったのか、自室の椅子に座るヨーイチの向かい側に不思議そうな顔で座るシンジがいた。
いつの間にいたんだ?というか何故ここに?と疑問が浮かぶが、ソレに構わずシンジは「すごかっただろ?」と話を切り出し始めた。

「いやさぁ、あんなバトル見たことないんだよなぁ。どこにも影響はないとはいえ、あんな機体をボロボロにする戦い方…あーもうめちゃくちゃだよ」
「いつからいたの!?」
「リプレイが始まったあたり」
「あのさぁ、勝手に入ってこないでよ!僕の部屋なんだからさ」
「いいだルォ?兄弟なんだぜ、それくらい許しちくりよ…思春期か何か?」
「その気持ち悪い言葉もやめろよ!恥ずかしいって…」

シンジは「ふぅん」と言いながら立ち上がり、ドアの方へ向かった。

「女々しいなぁ、じゃね、RJくん」
《オ、オウ》

シンジがリイナに向かって手を振る。対してリイナは、汗のホログラムで困惑しているような素振りを見せた。
RJ。リイナ・ジョリーを略した名前らしいが、シンジはいつもこれでリイナを呼ぶ。

「ったく、いつもああなんだ…」

ヨーイチは呆れ半分で呟きながら、机の方にへと向かった。
そこにはジム・スナイパーPSTのガンプラ、そして塗装が施されたトライ・ブースター・ユニットがあった。
リイナがころころと椅子の足元にへと転がり「モウ出来タン?」と聞く。

「うん…合わせ目は瞬着、塗装もジムスナの修復に使ったままでエアブラシも片づけてなかったし、パパパっとやっちゃったよ」
《ホーン……ナンカ大キイブースターヤナ》

リイナを持ちあげ、そのブースターユニットを見せる。
トライ・ブースター・ユニットは巨大なシュツルムブースター、そしてその両側に付く二基のスラスターポッドからなる高機動型の装備である。
スラスターポッドはそれぞれ細かな可動ができるため、多少トリッキーな動き方も可能となっている。

「それにこのブースターは大容量のプロペラントタンクとしての役割も持ってる。バトルでは高機動だけじゃなくてロングダッシュも可能になるんだ」
《ヨーイチニハウッテツケ、ッテワケヤナ?》
「まあね」
《ナルホドナァ、コレカラハコウイウ装備ガ必要ニナッ―――――》

話している途中、リイナから「ピピピピピ!」と電子音が鳴った。
ヨーイチの心臓がどくんと跳ねる。その電子音の種類は、ハロに搭載されたメッセージ機能の通知音だった。

《アッ、ゴメンイキナリ…ビックリシタ?》
「いや…」

驚いたのはそこだけじゃない。
恐る恐るリイナを開け、届いたメッセージの内容を確認する。
新着の欄に表示された件名を見て、ヨーイチはその不安が的中したことを確信した。

『ビーストバトラーズ運営:出場催促のお知らせ』

ついに来てしまった。いや、そろそろ来るかもしれないとはわかっていたけれど。
メッセージを開封し、中の内容を確認する。

『フキヨセ・ヨーイチ選手様へ
ビーストバトラーズの前回試合から明日で1週間が経ちます。最後に行った試合から出場せず7日間を経過した場合、選手所持のハロは自動的にリミッターが発動し、破壊されます。
明日と明後日の出場枠を設けていますので、検討をよろしくお願いします。』

ルールブックで既に知っている決まりだったが、いつ見ても無茶苦茶な決まりだとヨーイチは思っていた。
だが、なんとなくその理由に検討がついていた。あれだけ閉鎖的な大会、そして非公式の賭博バトル。外にはどうしても漏らしたくないために、証拠を隠滅しようとしてるのだろう。
その手段の一つが、出場選手のハロの破壊だった。

《ヨーイチ?》
「…うん」

ヨーイチはリイナが壊されることも怖かったが、誰かのガンプラを壊すということも怖かった。
あの場所ではそのどちらかを選ばなければならない。そうしないと、生き残れないのだ。

「やるしかないのか」

明日行くしかない。いや、行かなければ……。
リイナを抱えながら、ヨーイチは机の上のジム・スナイパーPSTを見た。

「また、傷つけるかもしれない」

先日のバトルでついた傷のレタッチ跡が目立つ自らのガンプラを見て、ヨーイチは呟いた。

 

 

 

Chapter.2 それがアリかはわからない
第九話:招かれる”人”たち

 

 

「でね、その人なんて言ったと思う?いきなりね…」

とりとめもない会話が聞こえる夜の食卓は、ごく普通の家庭的な風景の一つである。
だがそれが数日おきのことであり、そして必ず二人だけであるというのは、アリカワ・テイコにとっては普通のことだった。
向かい側で話す姉―――アリカワ・ナナセの話に「ふーん」とか「へえ」と返事を返しながら、黙々とご飯を食べる。
中途半端な返事だな、と少し申し訳ないようなそんな気持ちにもなるが、ナナセは気にしてないようだったし、テイコ自身もすぐに気にしなくなった。
アルバイトと大学で忙しい彼女でも、朝は朝食、昼はお弁当、夜は出来る時にはちゃんとした晩御飯を作ってくれる。
正直おせっかいだと思うけど、なんだかんだでいい姉なのかな。

「そういえばお父さんから手紙届いてたよ、後で見る?」
「うん」
「まだ忙しいみたいねー、お母さんも次に帰ってこれるのは夏休み明け辺りって…」

そう言いながら、ナナセは少し寂しそうな目でリビングの棚に置かれた家族の集合写真に目を移した。ナナセらがにこやかな中、テイコだけ照れくさそうに笑っている。
その写真は、1年前に父が現在住んでいるシンガポールで撮ったものだった。
1年前に父が、さらにその1ヶ月後に母の単身赴任が決まり、アリカワ家はテイコとナナセだけが残された。
寂しい気もしたが、テイコ自身はのびのびとガンプラに専念できると少しだけ身軽になったような気分もあることは否定できなかった。
だが、ナナセが身の周りのことや生活習慣に厳しくなったのもその辺りからである。

「…お姉ちゃん」
「何?」

綺麗さっぱり食べ終わった食器の前に箸を置き、テイコは再び話し始めた。

「また明日勉強会で夜空けるんだけどいいかな」
「…ふぅん」

ナナセが疑わしそうにテイコへと目線を返す。
やっぱりまずかったかな、とテイコは半ば後悔したような気持ちになった。何回目かは忘れたが、この”言い訳”を言うのは…。

「最近ずいぶん熱心ね、これで5回目ぐらいかしら」

そうそう、それくらい。

「う、まあ、だって次取らないとヤバげだし、ね」
「…まあ勉強頑張るのは悪くないわ。むしろ姉として嬉しいわ」

どこまで親代わりなんだアンタは、と心の中で呟く。
しかし年長者としてこの家を仕切るのは、他でもない姉の役目だった。
母が旅立つ時によろしく頼むと姉が言われていたのを思い出したが、私だって高校生だしそこらへんは自分でも管理できる。
…はず。
「じゃあ私」とテイコが自分の食器を重ね、洗面台にへと持っていく。

「勉強しなきゃ」

手についた汚れを洗うと、テイコはそのまま自室にへと向かった。
2階への階段の途中「お風呂沸いたら言うから!」と聞こえた姉の問いかけに「先入ってて!」と返答する。
そう、こうのんびりしている場合ではない。テイコは2階に上がると、廊下の隅にある自室のドアを開け素早く入った。

「……ふぅ」

ドアのカギを閉めた途端、思わずため息が出てしまった。
罪悪感と成功感が、半分ずつ心の中でせめぎ合っている。

「また嘘ついちゃったな」

そうつぶやきながら、テイコは自らの作業机の椅子にへと座り込んだ。
教科書や参考書が綺麗に整えられた机の隣。所々塗料が付着し、カッティングマットからはみだしたカッターの刃が刻んだ傷が目立つ作業机は、元々学習机として使っていたものだった。
現在勉強机として使ってるのは、いなくなった父がだいぶ前に使っていたものだ。形は古いが十分に使える。
だが、今勉強机の上は充電状態のまま眠るようにいるハロ・ハヤタカが独占しており、とても勉強できるような感じではない。

――――勉強会なんてのは嘘。そもそも定期テストはほとんど勉強しなくたってイケる。

作業机にあったガンプラの空き箱を開け、中身を取り出し始める。
出てきたのはオレンジ色に塗装された機体――――――ヅダ・CQカスタムのガンプラだった。
レタッチされた個所が各部分に見られ、細かい傷跡のようなものがついている。
リアリティを高めるためにウェザリングなどでわざと傷つけるという手法はあるが、これはそんな傷ではない。

「よし」

テイコは箱に入っていたヅダのシールドパーツを取り出し、手を付けられる状態かを確認した。
ヅダ・CQカスタムは、ヅダを近接戦闘用に特化させたテイコの改造ガンプラである。
機体色だけでなく、両手にはヒートサーベル、シールドに至っては両肩に付けられるようカスタマイズが施されている。
そして本機体にはもう一つ、巨大なブースター・Dブースターを装備した高機動形態が存在するが、これはシールドが破損した用に設定しておいたものだった。あの3人組のバトルでは偶然出してしまったが。
真っ二つに割れていたシールドパーツは、既に瞬間接着剤で補修してある。あとはヤスリで形を整え、再び塗装するだけだった。

「でも夜は虫が入ってくるしな…だからって網戸のままはちょっと―――――」
《ピピピピ!!》

独り言をぶつくさといっている途中、ハヤタカから電子音が鳴りだした。
勉強机に向かい、ハヤタカを充電のコードから外すと、テイコは中身を確認した。
電子音は、メッセージ受信のものだった。

「…」

メッセージのタイトルを見て、テイコはやはりと思った。
メッセージ自体の中身は見るまでもない。おそらく”あそこ”に1週間ほど出場しなかった時の催促だろう。
思えば”あそこ”にはしばらく行っていなかった。だからこっそりキイセンのバトルスペースを使おうとしてしまったのかもしれない。加えて言い訳をするのにも頻度というものがあったが、そんなに経っていたか。
だがそのためにナナセに嘘をついたのだ。”あそこ”は午前より夜の方が雰囲気も相手も良い…。

「ふふふ…」

自らにふつふつと湧き上がってくる感情を感じ、テイコは思わず微笑した。
が、それをすぐに打ち消すと再び真剣な面持ちで作業机に向かった。
机に置かれたヅダATカスタムのガンプラに触れる。
自分自身の”ずれ”を治すために戦う。そのための機体、そのためのガンプラ。一緒に戦ってきたガンプラ…。
例え何をしてもこの”ずれ”を治さなければいけない。でもそれは本当にいいのだろうか。好きだったガンプラバトルが、いつの間にかそんな使命感に追われるようになって―――――。

「それでも、やるしかないんだ」

もう一度満足するために、もう一度戻るために。
時刻は午後8時。換気のために開けてある網戸からの生暖かい風が、テイコの肌を撫でた。

 

つづく

 

 

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