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GPBB外伝 BEAST BATTLEARS Caputer.2 第十話:橙色の”相手”

《決まったーッ!勝者はAサイドッ!白熱した勝負だったぜー!》

その盛り上がる観客の熱気は、ビーストバトラーズの状況を裏でただ淡々と見守る管理室にも響いていた。
廃ビルの地下ホールを改修した会場は、外にそれらが聞こえないようになっているが内側はそうでもない。
会場として使う際の目立った工事はその防音設備、そしてサバイヴの機器や管理室のオペレーティングシステムの設置とそれだけだった。
サバイヴはあのシステム――――ガンプラを破壊する―――――を除けば、一般の公式大会で使われている投影機となんら変わらないものである。設備の充実だけは非公式大会らしかぬものだが、ここに誘われたものだけがそれらを使うことができる。それがいいことなのか悪いことなのかは、その本人次第である。

「サバイヴ、ホログラム展開停止。冷却に入ります」
「ああ」

片手に抱えるスーツの内ポケットからハンカチを取り出し、男は額の汗を拭きながらオペレーターの報告に返事をした。
ヴゥゥンと鈍い音が聞こえはじめる。男らが見守る画面の一つには、サバイヴの巨大ハロ直下にある冷却装置が作動し始めたことが表示されていた。
サバイヴを含めガンプラバトル大会に使われる機器は、それ自身が巨大な投影機かつコンピュータであるため、使用の際には周辺が熱くなるほどの熱を発する。
そのため運用には冷却装置が必須で、大会の投影機には必ずと言っていいほどどこかにそれが仕込まれている。
サバイヴの場合は冷却装置が4つ使われているのだが、今日はその一つが不具合を起こし、熱気が処理しきれず外に漏れてしまっていた。
そのため、今の会場内ほとんどに、観客たちのものとは別の”熱気”が漂っていた。

「いやはや、こう熱いとやってられませんな…」
「そうですね」
「修理も内部スタッフがやらないといけない…不便です、はい」
「しかしそうしなければいけない事情があるんです。そこらへんはあなたの方が詳しいと思います」
「うぅ?う、はい」

いつもの調子でその男の部下、セガワが返答する。
彼からにじみ出る汗は、男よりも多く見えた。
しかし彼の言う通りだった。仕方ないとはいえ、熱い。

「あっ、部長」
「どうした」

オペレーターの一人が、突然男を呼んだ。

「こ、この人…」
「ん」

そう指示されたモニターを確認すると、待合室のカメラの映像が映っていた。
瞬間、男は一瞬とんと心臓が軽く跳ねるような感覚に陥った。

「確かこの人のバトルすごい感じでしたよね、なんというか…」
「えぇ、また来たんですか?」
「うっ!セガワさん汗凄すぎ!」
「し、しましぇん」

モニターを見に来たセガワに、オペレーターが鼻をつまみながら彼を手で払う。セガワはただ汗を流し戸惑うだけだった。
その傍らで、男はその映像に映る人物を見て一つの確信をしていた。
凄まじく長い髪、薄紫のハロ。服装は依然と違うが、これは間違いない。

「…部長?」

オペレーターが映像の人物を見つめる男に声をかける。
体の中から胸にへとこみ上げてくる何かが、男の体をさらに熱くさせる。
俺をそうさせるのは他でもない、あの長髪の女学生。観客やオペらからはあまり良い印象は伺えないが、俺はまったく別の感情を持っていた。
自身をさらに上にへと上げてくれるかもしれない、その逸材に対して…。

「すいません、オペレーター、そのまま監視・管理を続けてください」
「り、了解」
「セガワさん、少しここを頼みます」
「えっ!ちょっ、どこへ行く!?」

敬語になっていないのも気にせず、セガワが慌て気味に男に言った。
管理室のドアに手をかけながら、男が返答する。

「……この戦い、直接見てみたいんです」

「そんな…!」とセガワの声を聞きつつも、男はそのまま管理室から退室し、バタンとそのドアを閉じた。
そのまま男は急ぎ足で、管理室よりさらに薄暗い通路を歩く。
高鳴る心を感じながら、男はその長髪の女学生のことを想った。
そう、あの学生の名前は――――――。

 

 

 

Chapter.2 それがアリかはわからない
第十話:橙色の”相手”

 

 

「アリカワさん…?」

盛況する観客たちに囲まれたサバイヴ。
その両サイドの片方にいるヨーイチの口から、向かい側にいる人物の名前がこぼれた。
服はミクス高校の制服、髪は少しボサついた長髪、前髪で半分隠れた顔、そして薄紫色をしたハロを持つ彼女は、どう見てもアリカワ・テイコだった。

「な、なんでアリカワさんが」

そう驚きながらも、ヨーイチは彼女に抱いたある想いを思い出した。
”まるであそこの戦い方だ”。あそことは紛れもなく、ここ――――ビーストバトラーズのことである。
催促のメールが来た翌日、ヨーイチは学校の終わったすぐ後、ビーストバトラーズの会場にへと駆け込んでいた。
まだ夕方だが人は多く、前回と異なりすんなりと入ることができた。
まだ期限じゃない。まだリイナは無事だ。そう思い安堵する間もなく、ヨーイチの番はすぐにきた。
薄暗い会場の通路を歩く途中、ヨーイチはバトルのことを考えていた。
無事のままでいるためには戦うだけじゃない、勝たなきゃいけないんだ。
相手のガンプラを破壊しないで勝つ方法はある。それを通していけば、必ず…。
そう決心したヨーイチの前に現れたのが、彼女だった。

「……!」

困惑と驚愕が心の中でまざるヨーイチだったが、一瞬テイコと視線が合った。
半分しか見えない顔であったが、彼女もこちらに気付いたようで、少しだけハッとした表情を見せた。
が、すぐに目を反らし、自らのハロからガンプラを取り出し準備を再開した。

「アリ、カワさ―――」
《おーい!今回二回目のフキヨセ選手ゥ!相手はまさかの…んまあ、問題児ってやつ?まあどちらにせよ運が悪い!早く準備を済ませよーゥ!》

実況者が手を止めたままのヨーイチに呼び掛ける。
また嘲笑を浴びせられると一瞬身構えたヨーイチだったが、不思議とそんな声は聞こえなかった。
逆に言うと、今回は妙に静かな感じが観客席から漂っていた。前回と比べたら妙におとなしい。
しかしその静かさの反面、突き刺さるような鋭い視線は確かに感じていた。そこは前と同じだった。

「…やるしかないか」

確かに彼女の戦い方が荒くそして凶暴だと思ったのは事実である。
しかし、それが本当に、そしてビーストバトラーズに関わっていたというのは予想外だった。
でも、内心そう思っていたのかもしれない。あんな戦い方をする人が、この野獣の巣窟に魅了されていてもおかしいことはない…。
複雑な心境の中で、ヨーイチはリイナをサバイヴに設置し、ジム・スナイパーPSTをボックスにへといれる。
ジムスナPSTのバックパックには、先日作ったトライ・ブースター・ユニットが装着されていた。

《ヨーイチ、行クデ!》
「…うん」

サバイヴの巨大ハロの口が開かれ、そこから粒子のようなCGが流れてくる。
その粒子がヨーイチの周囲を包み、ホログラムを展開していった。

《…お前》

操縦桿がヨーイチの両手に現れた瞬間、コクピット内に鋭い声色をした女の声が聞こえた。
通信のウインドウが開いている。『SOUND ONRY』と表示されているが、相手はわかりきっていた。

《あの時の…どうしてここに》
「それなりの事情が、あるんだけど…でも、どうしてアリカワさんが!?」
《…言ってしまえばお前と同じ、それなりの事情がある》

「え?」と声を出したヨーイチに構わず、テイコは続けた。

《建前で言うなら、私は強い人を追い求めてここに来た。それ以外に理由はないよ》
「でも、ここにくること…!」
《…だから、そうしなきゃいけない理由があったんだって》
「確かにここは強いひとばかりかもしれない、破壊するかされないかを楽しむ人たちだから。でも、わざわざそんな危険な場所に来るなんて―――」
《!…ふん》

一瞬、テイコがぷいとふてくされたような感じになったが、すぐに元に戻った。
ヨーイチはある意味では予想外のその反応に、面を食らった。今のを見る限りでは、割と普通の女の子に見える。けど、それじゃああの戦いは…。

《…まあ、これだけは言わせてもらうけど》

いつの間にかホログラムの展開が終わり、周囲の光景がいつものカタパルトとなっていた。
正面には機体情報のウインドウが数々表示されている。

《容赦はしないよ》

そうテイコが言い切った瞬間、通信のウインドウが閉じた。

「…こっちこそ」

そうしなきゃいけないんだ。僕は。
既に繋がっていないテイコへの通信に構わず、ヨーイチは彼女の言葉にそう返した。

《BATTLE START!!》
「ヨーイチ・フキヨセ、ジム・スナイパーPSTで出ます!」

ヨーイチの言葉と同時に、ジム・スナイパーPSTがカタパルトを滑り、そのままバトルフィールドにへと放り出された。
直後、周囲の風景は星々の広がる黒に染まった。

「宇宙のステージ…?」

宇宙ステージは言わずもがな重力の補正によって、地上ステージとは違う立ち回りが必要となる。
上も下もないことが多いから、というのが理由だが、今現在ジム・スナイパーPSTの足元には機械で出来た”足場”が広がっていた。

《コレハ…コロニーヤナ》

リイナの報告を聞きながら、ヨーイチはその足場にへとジム・スナイパーPSTを着地させる。
宇宙ステージでは、機動戦士ガンダムに出てくるソロモンやアクシズのような巨大隕石、はたまたデブリ群等宇宙ステージには障害物が混ざることがある。
それが足場として機能したりするわけだが、今回はこのコロニーらしいものがソレというわけだった。
だが劇中のようにそこまで大きいというわけでなく、目を凝らせばすぐに端が見えるくらいのものだった。おそらくバーニアを全部吹かせば20秒とかからない。

「アリカワさんはどこだ…?」

ヨーイチがいつものようにバイザーを下ろし、索敵範囲を広げ敵機を確認しようとしたその瞬間だった。

PPPPPP!!!
「ッ!」
《12時方向、真正面!》

操縦席に警告音が鳴り響き、ヨーイチは思わず「もう仕掛けてきたのか!?」とその速さに驚いた。
リイナの言う正面を見る。来る敵機にビームライフルを構えようとした、

「!?」

その直後だった。
ヨーイチは、一瞬、自らの全身がぶるりと震えるのを確かに感じた。
それもこれも、その正面を見据えた瞬間身を包んだ”冷たい何か”に反応したからだった。
自らに突き刺さる”何か”。あのグフカスタムのとは違う、圧倒的に違う、その鋭い感情――――。

「殺気…」

そう言うことしかできない。
心の中で続けたヨーイチの目の前に、その鋭い殺気を帯びたオレンジ色の機体が迫ってきた。
肩部や持っている武器はあのリプレイで出てきたものとは違うが、本体は同じだ。
ピンク色のモノアイを光らせ、既にヨーイチにプレッシャーを与えているその機体―――――。

《行くぞオラアアアアアアッッッッ!!!!》

ヅダ・CQカスタムは、その絶叫と共にジム・スナイパーPSTに襲い掛かった。

 

つづく

 

 

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